個人事業主の電車の定期券代は経費になる?仕訳・年またぎの処理・インボイス対応を解説
「自宅とは別に借りている事務所まで、電車で通っている」「常駐先のクライアントに毎日通うために定期券を買った」——個人事業主にとって、電車の定期券代は毎月・毎期かかる身近な費用です。
結論から言うと、事業のために使う定期券の代金は、個人事業主でも経費(旅費交通費)にできます。ただし、自宅兼事務所の場合や、年をまたいで定期券を購入した場合、インボイスの保存など、押さえておきたいポイントがあります。この記事では、具体的な仕訳とあわせてわかりやすく解説します。
なお、税法は税制改正などによって変わることがあります。本記事は執筆時点のルールをもとにしていますので、実際に経費計上する際は、その時点の最新情報を国税庁のWebサイトなどで確認するようにしてください。
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個人事業主の定期券代は経費になる?
会社員は通勤手当を会社から受け取りますが、個人事業主は自分で定期券を買います。事業を行う場所への移動のために購入した定期券であれば、その代金は「旅費交通費」として経費にできます。
| ケース | 経費になる? |
|---|---|
| 自宅から別に借りている事務所・店舗までの定期券 | ◯ なる |
| 業務委託で常駐しているクライアント先までの定期券 | ◯ なる |
| 定期的に通う取引先・現場のある区間の定期券 | ◯ なる |
| 自宅兼事務所で働いているのに、自宅の最寄り駅から別の駅までの定期券 | △ 業務での利用実態による |
| 趣味・習い事・家族の用事など、私的な移動のための定期券 | ✕ ならない |
自宅兼事務所の場合は要注意
自宅を事務所にしている場合、そもそも「事務所への通勤」が発生しません。それでも定期券を経費にしたい場合は、その区間を業務で頻繁に使っていること(取引先への訪問、打ち合わせ、コワーキングスペースの利用など)を説明できる必要があります。業務での利用が少ない場合は、回数券やICカードで都度支払い、実際に業務で乗った分だけを経費にするほうが確実です。
休日にプライベートで使った場合は?
事業のために購入した定期券を、休日にたまたまプライベートで使うことがあっても、定期券の購入目的が事業であれば、通常は全額を経費にして差し支えありません。定期券は区間内なら何度乗っても料金が変わらないためです。
一方、プライベートの利用が中心なのに事業用として経費にしている場合は、否認されるおそれがあります。区間や購入目的が事業と結びついているかが判断のポイントです。
定期券を購入したときの仕訳
基本の仕訳
例:4月1日に、事業用の口座から6か月定期券(60,000円)を購入した
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 60,000円 | 普通預金 | 60,000円 |
プライベートの財布やカードで購入した場合は、貸方を「事業主借」にします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 60,000円 | 事業主借 | 60,000円 |
年をまたぐ定期券の場合
個人事業主の会計期間は1月1日〜12月31日です。たとえば11月1日に6か月定期券(60,000円)を購入すると、有効期間は翌年4月30日までとなり、年をまたぎます。
原則的な考え方では、今年の経費は今年の利用期間(11月・12月の2か月分)だけで、残りの4か月分は「前払費用」として翌年に繰り越します。
| 時期 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 11月1日(購入時) | 旅費交通費 | 60,000円 | 普通預金 | 60,000円 |
| 12月31日(決算時) | 前払費用 | 40,000円 | 旅費交通費 | 40,000円 |
| 翌年1月1日 | 旅費交通費 | 40,000円 | 前払費用 | 40,000円 |
ただし、支払った日から1年以内にサービスを受ける費用で、毎年継続して同じ方法で処理している場合は、「短期前払費用」の特例により、支払った年に全額を経費にすることも認められています。6か月定期券のように期間が1年以内のものは、実務上この方法で購入時に全額を経費にしているケースも多くあります。どちらの方法を選んでも、毎年同じ方法で継続することが大切です。
インボイス制度への対応
消費税の課税事業者が、定期券代の消費税を仕入税額控除するには、インボイスの扱いを確認しておく必要があります。
3万円未満なら帳簿の保存だけでOK
電車・バスなどの公共交通機関の運賃は、1回の取引の金額が税込3万円未満であれば、インボイスがなくても一定の事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除ができます(公共交通機関特例)。帳簿には、通常の記載事項に加えて「3万円未満の鉄道料金」などの特例の対象であることや、仕入先(鉄道会社名)などを記載しておきます。
3万円以上の定期券はインボイスの保存が必要
3万円未満かどうかは1回の取引の金額で判定するため、6か月定期券のように1回の購入額が3万円以上になる場合は、公共交通機関特例の対象外です。駅の窓口や券売機で登録番号が記載された領収書を受け取り、インボイスとして保存しましょう。
- 駅の窓口・券売機で購入:購入時に領収書の発行を依頼し、紙で保存(またはスキャナ保存)します。
- モバイルSuica・モバイルPASMOなどで購入:アプリや会員ページから領収書をダウンロードし、電子帳簿保存法のルールに沿って電子データのまま保存します。
ICカードのチャージ分は別に考える
Suicaなどの定期券にチャージした金額は、チャージした時点ではまだ使っていないため、厳密には経費ではありません。実際に業務で乗車したときの運賃を、利用履歴をもとに経費にします。定期券部分の代金とチャージ部分は、分けて管理しましょう。
定期券を払い戻した場合
事務所の移転や契約終了などで定期券を途中で払い戻した場合は、戻ってきた金額を経費から差し引きます。払い戻し手数料は経費になります。
例:購入時に全額を旅費交通費にしていた6か月定期券を払い戻し、手数料220円を差し引かれて25,000円が戻ってきた(同じ年のうちに払い戻した場合)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 25,000円 | 旅費交通費 | 25,000円 |
払い戻し額は手数料が差し引かれた後の金額なので、戻った金額だけ旅費交通費を減らせば、手数料分は自然に経費として残ります。前の年に経費にした定期券を翌年に払い戻した場合は、戻った金額を「雑収入」として計上します。
家族従業員(青色事業専従者)に通勤手当を支給する場合
青色事業専従者や従業員に通勤用の定期券代を支給する場合は、通勤手当として経費にできます。通勤手当は、公共交通機関を利用する場合、1か月あたり15万円まで非課税とされており、受け取る側にも所得税はかかりません。なお、従業員に支給する通勤手当は、インボイスがなくても帳簿の保存だけで仕入税額控除ができる扱いになっています。
経費にするために残しておきたい記録
- 定期券の区間・有効期間・金額がわかる領収書(3万円以上ならインボイスとして保存)
- 事務所の賃貸借契約書や、常駐先との業務委託契約書など、その区間を使う理由がわかる資料
- 自宅兼事務所の場合は、その区間を業務で使った訪問記録・スケジュール
- ICカードの利用履歴(チャージ分を業務で使った場合)
経費管理をラクにするなら
定期券の購入や払い戻し、ICカードの利用履歴、年をまたぐ前払費用の処理などを正確に記帳するには、日々の管理が大切です。クラウド会計ソフトを使えば、交通系ICカードの利用履歴やカード明細を取り込み、仕訳や決算書の作成までまとめて管理しやすくなります。
代表的なサービスとして「マネーフォワード クラウド」と「freee会計」があります。無料で試せるプランが用意されていることも多いので、実際の画面を触って使いやすいほうを選ぶのがおすすめです。
マネーフォワード クラウド
会計・請求書・経費精算などのサービスをまとめて提供しており、複数の業務を一つのシリーズで管理したい方に向いています。
freee会計
簿記の知識が少なくても使いやすい画面づくりが特徴で、経理初心者や個人事業主・小規模な会社に向いているクラウド会計ソフトです。
※対応機能や料金プランは変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
まとめ
- 事業のために使う定期券代は、個人事業主でも旅費交通費として経費にできる
- 自宅兼事務所の場合は、その区間を業務で使っている実態が必要
- 事業目的で買った定期券なら、休日にたまたま私用で使っても、通常は全額経費で差し支えない
- 年をまたぐ定期券は、原則は前払費用で期間按分。継続適用を条件に短期前払費用として購入時に全額経費にすることも可能
- インボイスは、1回の購入が3万円未満なら帳簿の保存だけでOK。3万円以上の定期券は領収書(インボイス)の保存が必要
- 払い戻した場合は、戻った金額を経費から差し引く(前年分なら雑収入)
- 税法は改正されることがあるため、経費計上の時点で最新のルールを確認する
判断に迷う場合は、税理士に相談するのが安心です。
※本記事は2026年11月時点の税法・情報をもとに作成しています。税法は税制改正などにより変わることがあるため、実際に経費計上する際は国税庁のWebサイトなどで最新の情報を確認し、個別の判断については税理士等の専門家にご確認ください。