自宅兼事務所の家賃、個人事業主時代と同じ按分でいい?ひとり社長が経費にする2つの方法

個人事業主のころは、自宅家賃のうち仕事で使う部分を「家事按分」して経費にしていた方も多いでしょう。では、法人になっても同じやり方でいいのでしょうか。

結論から言うと、法人では「個人が払っている家賃を、そのまま会社の経費にする」ことはできません。会社の経費にするには、会社が社長に家賃を払う形にするか、会社が部屋を借りて社宅にするかのどちらかが必要です。そして多くの場合、経費にできる金額が大きいのは社宅のほうです。

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個人が払った家賃は、そのままでは会社の経費にならない

結論:会社の経費にできるのは「会社が払ったお金」だけです。個人名義で契約し、個人の口座から払っている家賃は、会社の経費になりません。

個人事業主のときは、事業主本人が家賃を払っているので、その一部を事業の経費にできました。しかし法人は社長とは別の存在です。会社は家賃を1円も払っていないのに、会社の経費に入れることはできません。

「個人事業主時代と同じように、決算のときに家賃の20%を会社の経費に入れておく」というのは、法人では典型的なNG行動です。税務調査で否認されるおそれがあります。

方法1:会社が社長に「事務所の使用料」を払う

結論:社長が個人で借りている部屋の一部を、会社が社長から借りる契約を結び、使用料を払えば、その使用料は会社の経費になります。

具体的な手順は次のとおりです。

  1. 仕事で使う割合を決める:事務所として使っている部屋の床面積の割合などで、合理的に決めます。
  2. 会社と社長の間で賃貸借契約書を作る:使用する部分、月額の使用料、支払日などを書面にします。
  3. 毎月、会社の口座から社長の口座へ使用料を振り込む

家賃15万円の自宅で、仕事部屋が床面積の20%を占める場合、月3万円を会社から社長に払います。

借方(科目) 金額 貸方(科目) 金額 ポイント・摘要
地代家賃 30,000 普通預金 30,000 自宅事務所の使用料(社長へ支払い・契約書あり)

このとき、社長個人は会社から家賃収入を受け取ることになります。これは社長個人の不動産所得、つまり「部屋を貸して得た収入」です。ただし社長は、大家さんに払っている家賃のうち会社に貸している部分(月3万円)を必要経費にできるため、所得はほぼゼロになります。

※社長個人の確定申告や住民税の申告が必要になる場合もあるため、念のため確認しておきましょう。

また、賃貸物件によっては契約で事業利用が禁止されていることがあります。会社の本店所在地として登記する前に、管理会社や大家さんに確認しておきましょう。

方法2:会社が借りて「社宅」にする(経費にできる額が大きい)

結論:会社名義で部屋を借りて社長に貸す「社宅」にすれば、社長が払う少額の家賃を除いた大部分を会社の経費にできます。

社宅の場合、会社が大家さんに家賃を払い、社長は会社に「一定のルールで計算した家賃」を払います。この社長負担分は、建物の固定資産税評価額などから計算するため、相場の家賃よりかなり低くなるのが一般的です(計算方法は7日目の記事で詳しく解説します)。

家賃15万円の物件で、社長負担が月2万円になった場合の比較です。

項目 方法1:使用料を払う 方法2:社宅にする
会社の経費(月) 3万円 13万円(15万円−社長負担2万円)
会社の経費(年) 36万円 156万円
社長個人の負担(月) 12万円(残りの家賃) 2万円
手続きの手間 契約書を作るだけ 会社名義での契約が必要(引っ越しや名義変更)

※社長負担額は物件の広さや評価額によって大きく変わります。上の2万円は説明のための仮の数字です。

社宅にすると、社長個人の家賃負担が大きく減ります。その分、役員報酬を下げても今と同じ生活ができるため、社会保険料や所得税を減らせるのが最大のメリットです。

光熱費やネット代も同じ考え方

結論:電気代やネット代も、会社が払っていなければ会社の経費にはなりません。会社名義で契約するか、使用料・立替精算の形にします。

  • ネット回線:仕事での利用が中心なら、会社名義で契約し、会社の口座やカードで払うのがシンプルです。
  • 電気代:個人名義のままなら、仕事で使う割合を決め、会社が社長に精算します(1日目の立替精算の記事を参照)。

どの方法でも大切なのは、「なぜその割合なのか」を説明できるようにしておくことです。床面積や使用時間など、根拠をメモしておきましょう。

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まとめ

  • 個人が払っている家賃を、そのまま会社の経費にすることはできない(個人事業主時代の家事按分はNG)
  • 方法1:会社と社長で賃貸借契約を結び、会社が社長に使用料を払う
  • 方法2:会社名義で借りて社宅にすれば、社長負担分を除いた大部分を経費にできる
  • 社宅にして個人の家賃負担が減れば、役員報酬を下げて社会保険料・所得税も減らせる
  • どの方法でも、割合や金額の根拠を説明できるようにしておく

今日からできる最初の一歩

まずは今住んでいる部屋の賃貸借契約書を取り出し、「事業利用の可否」と「床面積」を確認してみましょう。事業利用ができるなら方法1をすぐに始められます。次の引っ越しや契約更新の予定があるなら、そのタイミングで社宅にできないか検討してみてください。

※本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。個別の取り扱いは顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。