外注費の源泉徴収が必要なケースとは?デザイナー・ライターへの報酬の種類と納付の手続き(納期の特例)

「フリーランスのデザイナーにロゴ制作を頼んだけど、支払うときに源泉徴収は必要?」「ライターへの原稿料は10.21%を差し引くって聞いたけど、エンジニアへの支払いは?」——外注先への支払いのたびに、源泉徴収をすべきか迷っていませんか。

結論から言うと、源泉徴収が必要かどうかは、①支払う側が源泉徴収義務者か、②支払先が個人か法人か、③支払う報酬が法律で決められた種類に当たるかの3つで判断します。デザイン料や原稿料は源泉徴収が必要な代表例ですが、プログラミングなどは原則として不要です。この記事では、判断の手順と報酬の種類、税額の計算、納付の手続き(納期の特例を含む)まで、具体例でわかりやすく解説します。

なお、税法は税制改正などによって変わることがあります。本記事は執筆時点のルールをもとにしていますので、実際に手続きをする際は、その時点の最新情報を国税庁のWebサイトなどで確認するようにしてください。

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

源泉徴収が必要かを判断する3つのステップ

ステップ 確認すること 源泉徴収が不要になるケース
1 支払う側(自分)が源泉徴収義務者か 従業員に給与を払っていない個人事業主
2 支払先が個人か 支払先が法人(株式会社・合同会社など)
3 報酬が源泉徴収の対象となる種類か プログラミング、システム開発、単純な作業代行など、対象に含まれないもの

3つすべてに当てはまる場合に、源泉徴収が必要になります。

ステップ1:支払う側が源泉徴収義務者か

  • 法人:原則として、すべての法人が源泉徴収義務者です(社長ひとりの会社でも、役員報酬を払っていれば該当します)。
  • 個人事業主:従業員(家族従業員を含む)に給与を支払っている場合は源泉徴収義務者です。給与を払っていない個人事業主(ひとりで仕事をしている人など)は源泉徴収義務者ではないため、外注先への支払いで源泉徴収をする必要はありません。

ステップ2:支払先が個人か

デザイン料や原稿料などの報酬で源泉徴収が必要になるのは、支払先が個人(フリーランス・個人事業主)の場合です。支払先が法人であれば、原則として源泉徴収は不要です。外注先がどちらなのか、請求書の名義や契約書で確認しましょう。

なお、支払先がインボイス登録をしているか(免税事業者か課税事業者か)、青色申告か白色申告かは、源泉徴収の要否に関係ありません。

ステップ3:報酬が源泉徴収の対象となる種類か

源泉徴収の対象になる報酬・料金は、所得税法で種類が決められています。次で詳しく見ていきましょう。

源泉徴収が必要な報酬・不要な報酬(職種別)

外注先・仕事の内容 源泉徴収 報酬の区分
ライターの原稿料(Webメディアの記事、ブログ記事、書籍など) ◯ 必要 原稿の報酬
デザイナーのデザイン料(ロゴ、チラシ、パンフレット、バナー、Webデザインなど) ◯ 必要 デザインの報酬
イラストレーターの挿絵・イラスト料 ◯ 必要 さし絵の報酬
カメラマンの写真撮影料(雑誌・広告などの写真) ◯ 必要 写真の報酬
翻訳・通訳の料金 ◯ 必要 翻訳・通訳の報酬
セミナー・研修の講師料、講演料 ◯ 必要 講演の報酬・教授指導料
税理士・弁護士・社会保険労務士などの報酬 ◯ 必要 士業の報酬
モデル・タレントの出演料 ◯ 必要 芸能・出演の報酬
プログラミング、システム開発、アプリ開発 ✕ 原則不要 -
データ入力、事務作業の代行、清掃など ✕ 不要 -
動画編集、ホームページのコーディング △ 内容による デザインの要素が中心なら対象になる場合あり

※実際の判断は契約内容や仕事の実態によって異なります。判断に迷う場合は、国税庁のタックスアンサーや税理士に確認しましょう。

Web制作は「デザイン」と「プログラミング」を分けて考える

ホームページ制作のように、デザインとプログラミング(コーディング)が混ざった仕事は判断が難しいケースです。一般的に、Webデザインは「デザインの報酬」として源泉徴収の対象、プログラミングやシステムの構築は対象外と考えられています。

契約書や請求書でデザイン料とプログラミング料を分けて記載してもらえば、デザイン部分だけを源泉徴収の対象にできます。まとめて一つの金額で契約している場合は、全体を源泉徴収の対象として扱うのが安全です。

源泉徴収税額の計算方法

1回に支払う金額 源泉徴収税額
100万円以下 支払金額 × 10.21%
100万円超 (支払金額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円

10.21%は、所得税10%に復興特別所得税(所得税額の2.1%)を加えた税率です。なお、令和9年(2027年)以降は防衛特別所得税の創設にともない内訳が見直される予定ですが、源泉徴収の合計税率(10.21%・20.42%)は変わらないとされています。

消費税は差し引いて計算できる

請求書で報酬の額と消費税の額がはっきり区分されている場合は、消費税を除いた報酬の額に税率を掛けて計算できます。区分されていない場合は、消費税を含めた金額が計算のもとになります。

計算例:デザイナーに10万円(税抜)のロゴ制作を依頼

請求書:デザイン料 100,000円、消費税 10,000円、合計 110,000円

  • 源泉徴収税額:100,000円 × 10.21% = 10,210円
  • 実際に振り込む金額:110,000円 − 10,210円 = 99,790円
借方 金額 貸方 金額
外注費(または支払手数料など) 110,000円 普通預金 99,790円
預り金(源泉所得税) 10,210円

差し引いた10,210円は、外注先の代わりに税務署へ納める税金として「預り金」で管理し、期限までに納付します。

交通費や宿泊費を支払う場合

講師などに交通費や宿泊費を報酬と一緒に支払う場合、原則としてその金額も源泉徴収の対象に含まれます。ただし、支払う側がホテルや交通機関に直接支払う場合で、通常必要な範囲の金額であれば、源泉徴収の対象に含めなくてもよいとされています。

源泉徴収した税金の納付のしかた

原則:支払った月の翌月10日までに納付

源泉徴収した所得税は、報酬を支払った月の翌月10日までに納付します(10日が土日祝日の場合は翌営業日)。たとえば、11月25日に報酬を支払った場合は、12月10日までに納付が必要です。

  • 納付の方法:e-Tax(ダイレクト納付・インターネットバンキング)、金融機関や税務署の窓口(納付書)など
  • 納付書の区分:デザイン料や原稿料などは、給与用とは別の「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」を使います

納期の特例:年2回にまとめて納付できる

給与の支払いを受ける人が常時10人未満の事業者は、税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出して承認を受ければ、源泉所得税を年2回にまとめて納付できます。

支払った期間 納付期限
1月〜6月 7月10日
7月〜12月 翌年1月20日

要注意:原稿料・デザイン料は納期の特例の対象外

ここが最も間違えやすいポイントです。納期の特例の対象になるのは、給与・退職金と、税理士・弁護士・司法書士などの士業への報酬に限られます。

原稿料・デザイン料・イラスト料・講演料などから源泉徴収した税金は、納期の特例の承認を受けていても対象外で、原則どおり支払った月の翌月10日までに納付する必要があります。「納期の特例を使っているから、年2回まとめて払えばいい」と思い込んでいると、納付が遅れて不納付加算税や延滞税がかかるおそれがあります。

源泉徴収した税金の種類 納期の特例 納付期限
従業員・役員の給与 ◯ 対象 7月10日・1月20日(特例の承認を受けている場合)
税理士・弁護士・司法書士などへの報酬 ◯ 対象 7月10日・1月20日(特例の承認を受けている場合)
デザイナー・ライター・イラストレーター・講師などへの報酬 ✕ 対象外 支払った月の翌月10日

年が明けたら「支払調書」の提出も

個人の外注先に源泉徴収の対象となる報酬を支払った場合、同じ人への1年間の支払額の合計が5万円を超えると、翌年1月31日までに「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に提出する必要があります。また、外注先から源泉徴収票のような証明を求められた場合に備えて、支払額と源泉徴収税額を一覧で管理しておきましょう。

源泉徴収でよくある間違い

  • 源泉徴収の対象なのに、請求額をそのまま全額振り込んでしまう:後から外注先に返金を求めるのは難しく、税金を自社で負担することになりがちです。
  • 法人の外注先からも源泉徴収してしまう:法人への支払いは原則として不要です。
  • デザイン料の税金を、納期の特例で年2回にまとめて納付してしまう:翌月10日が期限です。
  • 消費税込みの金額で計算してしまう:請求書で区分されていれば、税抜の報酬額で計算できます。

発注の段階で、「源泉徴収をして支払います」と外注先に伝え、請求書に源泉徴収税額と差引の振込額を記載してもらうと、トラブルを防げます。

源泉徴収と支払いの管理をラクにするなら

外注先ごとに源泉徴収の要否を判断し、税額を計算し、毎月の納付や年明けの支払調書まで管理するのは手間がかかります。クラウド会計ソフトや請求書・支払管理のサービスを使えば、源泉徴収税額の計算や預り金の管理、支払調書の作成をまとめて行いやすくなります。

代表的なサービスとして「マネーフォワード クラウド」と「freee会計」があります。無料で試せるプランが用意されていることも多いので、実際の画面を触って使いやすいほうを選ぶのがおすすめです。

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まとめ

  • 源泉徴収が必要かは、①支払う側が源泉徴収義務者か ②支払先が個人か ③報酬が対象の種類かの3ステップで判断する
  • 給与を払っていない個人事業主は源泉徴収義務者ではないため、外注費の源泉徴収は不要
  • デザイン料・原稿料・イラスト料・写真・翻訳・講演料・士業の報酬などは対象。プログラミングやシステム開発は原則対象外
  • 税額は100万円以下なら10.21%。請求書で消費税が区分されていれば税抜額で計算できる
  • 納付は支払った月の翌月10日まで。納期の特例は給与と士業の報酬だけで、デザイン料・原稿料などは対象外
  • 同じ人への年間支払額が5万円を超えたら、翌年1月31日までに支払調書を提出する
  • 税法は改正されることがあるため、手続きの時点で最新のルールを確認する

判断に迷う外注先への支払いは、発注前に税理士に確認しておくと安心です。

※本記事は2026年11月時点の税法・情報をもとに作成しています。税法は税制改正などにより変わることがあるため、実際に手続きをする際は国税庁のWebサイトなどで最新の情報を確認し、個別の判断については税理士等の専門家にご確認ください。