インボイス登録を取りやめて免税事業者に戻る手続き|登録取消しと、経過措置が残る期間の注意点
「取引先に言われてインボイス登録をしたけれど、結局、登録番号を求められる取引はほとんどなかった」「消費税の申告と納付の負担が重い。免税事業者に戻れないの?」——インボイス制度が始まってから時間がたち、こうした相談も増えています。
結論から言うと、インボイス発行事業者の登録は、届出をすれば取りやめることができます。ただし、届出の期限や、登録した時期によってはすぐには免税事業者に戻れない「2年縛り」があります。また、登録を取りやめると、取引先が支払う消費税の負担が増えるため、取引条件への影響も考えておく必要があります。
この記事では、インボイス登録を取りやめて免税事業者に戻る手続きと、戻るための条件、取りやめた後に取引先との間で起きることを、わかりやすく解説します。
なお、インボイス制度や消費税の取扱いは改正されることがあります。本記事は執筆時点の情報をもとにしていますので、実際に手続きをする際は、国税庁などの最新情報を確認するようにしてください。
※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。
免税事業者に戻るための3つの条件
インボイス登録をやめて免税事業者に戻るには、次の3つをすべて満たす必要があります。
- 登録の取消しの届出をする:「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を期限までに提出する
- 「2年縛り」の期間が終わっている:登録した時期によっては、一定期間は課税事業者のままでいる必要がある
- 売上などの要件を満たしている:基準期間(個人は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下であることなど
3つ目の売上の要件を満たしていない場合は、登録を取りやめても、課税事業者のまま(インボイスを発行できない課税事業者)になります。課税事業者の判定については「課税売上高が1,000万円を超えたら|消費税の課税事業者の判定」で解説しています。
手続き:登録の取消しを求める届出書
届出の期限は「翌課税期間の初日の15日前」
登録の取消しの届出書を提出すると、原則として、提出した日の属する課税期間の翌課税期間の初日に登録の効力がなくなります。ただし、翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに提出する必要があります。この期限を過ぎて提出した場合は、翌々課税期間の初日に効力がなくなります。
| 例 | 登録をやめたい日 | 届出の期限 |
|---|---|---|
| 個人事業主 | 翌年1月1日 | 前年12月17日まで |
| 3月決算の法人 | 翌事業年度の4月1日 | 3月17日まで |
年末ぎりぎりに提出すると、取消しが1年遅れることになるので注意しましょう。届出書は、e-Taxで提出するか、書面で納税地を管轄するインボイス登録センター(業務センター)へ送付します。
課税事業者選択届出書を出している場合
インボイスに登録するときに、別途「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になっていた場合は、登録の取消しとは別に、「消費税課税事業者選択不適用届出書」の提出も必要です。この届出書にも、提出の期限や、選択してから2年間はやめられないといったルールがあります。
一方、2023年10月1日から2029年9月30日までの日を含む課税期間に、経過措置を使って(課税事業者選択届出書を出さずに)登録した免税事業者は、原則として登録の取消しの届出だけで手続きができます。自分がどちらの方法で登録したかは、提出した書類の控えなどで確認しましょう。
すぐには戻れない「2年縛り」
免税事業者が、経過措置を使って課税期間の途中から登録した場合、登録日から2年を経過する日の属する課税期間の末日までは、免税事業者に戻ることができません。これがいわゆる「2年縛り」です。
| 登録した時期 | 2年縛り |
|---|---|
| 2023年10月1日を含む課税期間中に登録(個人事業主なら2023年中の登録) | なし。取消しの届出をすれば、翌課税期間から免税事業者に戻れる |
| 上記以外の課税期間に、経過措置を使って登録(個人事業主なら2024年1月1日以後の登録) | あり。登録日から2年を経過する日の属する課税期間までは課税事業者 |
個人事業主の例
- 2023年11月に登録した場合:2年縛りはありません。2026年12月17日までに取消しの届出をすれば、2027年1月1日から免税事業者に戻れます(売上の要件を満たす場合)
- 2024年4月1日に登録した場合:登録日から2年を経過する日(2026年3月31日)を含む2026年分までは課税事業者です。2026年12月17日までに取消しの届出をすれば、2027年1月1日から免税事業者に戻れます(売上の要件を満たす場合)
- 2025年7月1日に登録した場合:2年を経過する日(2027年6月30日)を含む2027年分までは課税事業者です。免税事業者に戻れるのは、早くても2028年1月1日からです
※具体的な期間は、登録日や課税期間(法人の場合は事業年度)によって異なります。自分のケースは税務署や税理士に確認しましょう。
取りやめる前に確認したいこと
1. 取引先への影響(経過措置の割合が下がっていく)
インボイス登録をやめると、取引先は、あなたへの支払いについてインボイスにもとづく仕入税額控除を受けられなくなります。代わりに、経過措置によって一定の割合だけ控除できますが、その割合は段階的に下がっていきます。
| 取引先が仕入れを行った期間 | 取引先が控除できる割合 |
|---|---|
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日〜 | 控除できない |
取引先が原則課税で消費税を計算している場合、あなたへの支払いにかかる消費税の一部を、取引先が負担することになります。経過措置の割合が下がるほど、取引先の負担は大きくなり、取引条件の見直しを求められる可能性もあります。経過措置の詳しい計算は「免税事業者からの仕入れの経過措置が8割から7割へ」で解説しています。
一方、取引先が簡易課税や2割特例を使っている場合や、取引先が一般の消費者である場合は、あなたが登録しているかどうかで取引先の消費税は変わりません。主な取引先がどんな事業者なのかを確認しておきましょう。
なお、取引先がフリーランスなどの免税事業者に対して、十分な協議をせずに一方的に価格を引き下げることは、法律上問題となるおそれがあります。条件の見直しは、話し合いで決めることが大切です。詳しくは「フリーランス新法で発注・受注の実務はどう変わったか」をご覧ください。
2. 2割特例・3割特例と比べる
インボイス登録をきっかけに課税事業者になった小規模事業者は、売上の消費税額の2割(個人事業主は2027年分・2028年分は3割)を納付額とする特例を使えます。取りやめるかどうかは、特例を使った場合の納税額と、取引先との関係を比べて判断しましょう。
3. 取りやめた後に必要なこと
- 請求書の様式を変える:登録番号を記載した請求書を発行し続けると、インボイスと誤認させることになり、罰則の対象になるおそれがある。請求書のテンプレートや会計ソフトの設定から登録番号を削除する
- 取引先に知らせる:いつから登録を取りやめるかを、事前に取引先へ伝えておく
- 公表サイトの表示:国税庁の公表サイトには、取消しの年月日が表示される
- 最後の消費税の申告をする:課税事業者だった期間の分の消費税は、期限までに申告・納付する
- 棚卸資産の調整:課税事業者から免税事業者になる場合、課税事業者だった期間の最後に持っている在庫について、仕入税額控除の調整が必要になることがある
4. 再登録もできる
一度取りやめても、後から必要になれば再び登録の申請をすることができます。ただし、登録の手続きや効力が生じる時期にもルールがあるため、取引先の状況が変わりそうな場合は、早めに準備しておきましょう。
事業をやめる場合は手続きが違う
インボイス登録の取りやめではなく、事業そのものをやめる場合は、登録の取消しの届出書ではなく、「事業廃止届出書」を提出します。事業廃止届出書を提出すると、事業を廃止した日の翌日に登録の効力がなくなります。廃業の手続き全体は「個人事業を廃業・休業するときの手続きまとめ」をご覧ください。
消費税の計算と請求書の管理をラクにするなら
インボイス登録を続けるか、取りやめるかを判断するには、自分の売上と、取引先ごとの取引の状況を把握しておくことが大切です。会計ソフトや請求書サービスを使えば、取引先ごとの売上の集計や、消費税の試算、請求書の様式の切り替えもかんたんに行えます。
代表的なサービスとして「マネーフォワード クラウド」と「freee会計」があります。無料で試せるプランが用意されていることも多いので、実際の画面を触って使いやすいほうを選ぶのがおすすめです。
マネーフォワード クラウド
会計・確定申告・請求書などのサービスをまとめて提供しており、複数の業務を一つのシリーズで管理したい方に向いています。
freee会計
簿記の知識が少なくても使いやすい画面づくりが特徴で、経理初心者や個人事業主・小規模な会社に向いているクラウド会計ソフトです。
※対応機能や料金プランは変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
まとめ
- インボイス登録は、「登録の取消しを求める旨の届出書」を提出すれば取りやめられる
- 届出は、翌課税期間の初日から起算して15日前の日まで(個人事業主は12月17日まで)。過ぎると取消しが1年遅れる
- 2023年10月1日を含む課税期間(個人は2023年中)の登録なら2年縛りなし。それ以降の経過措置による登録は、登録日から2年を経過する日の属する課税期間までは課税事業者
- 課税事業者選択届出書を出していた場合は、選択不適用届出書も必要。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば、取りやめても課税事業者のまま
- 取りやめると、取引先は経過措置(70%→50%→30%)の範囲でしか控除できなくなる。主な取引先の状況を確認し、2割・3割特例とも比べて判断する
- 取りやめた後は、請求書から登録番号を削除する。制度は改正されることがあるため、最新の情報を確認する
インボイス登録を続けるか、やめるかは、消費税の負担だけでなく、取引先との関係にもかかわる判断です。期限と条件を確認したうえで、取引先とも話し合いながら決めましょう。判断に迷う場合は、税務署や税理士に相談しましょう。
※本記事は2026年11月時点の税法の情報をもとに作成しています。インボイス制度や消費税の取扱いは改正されることがあるため、実際に手続きをする際は国税庁などの最新情報を確認し、個別の判断については税理士等の専門家にご確認ください。

