自宅兼事務所を買った場合の住宅ローン控除と事業割合の関係|事業割合が高いと控除が減る仕組み
「自宅兼事務所として家を買った。仕事部屋として家の半分くらいを使っているけど、住宅ローン控除は受けられるの?」「事業用の割合を経費にしたら、住宅ローン控除が減るって本当?」——自宅で仕事をする個人事業主やフリーランスが家を買うと、必ず出てくる疑問です。
結論から言うと、自宅兼事務所でも住宅ローン控除は受けられます。ただし、控除の対象になるのは住宅ローンのうち「居住用」の部分だけです。事業用の割合を高くすると、その分だけ経費は増えますが、住宅ローン控除は減ります。さらに、居住用の部分が床面積の2分の1未満になると、住宅ローン控除そのものが受けられなくなります。
この記事では、自宅兼事務所の住宅ローン控除と事業割合の関係を、計算例を交えてわかりやすく解説します。
なお、住宅ローン控除は、税制改正で毎年のように見直されている制度です。本記事は執筆時点の情報をもとにしていますので、実際に申告する際は、国税庁や国土交通省などの最新情報を確認するようにしてください。
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住宅ローン控除の基本
住宅ローン控除(正式には「住宅借入金等特別控除」)は、住宅ローンを使って家を買ったり建てたりした場合に、年末のローン残高の一定割合(2022年以降に入居した場合は0.7%)を、所得税(引ききれない分は住民税の一部)から差し引ける制度です。
所得から差し引く「所得控除」ではなく、税額から直接差し引く「税額控除」なので、節税の効果が大きいのが特徴です。
控除を受けられる期間や、対象になるローン残高の上限(借入限度額)は、新築か中古か、住宅の省エネ性能、入居した年などによって異なります。令和8年度の税制改正では、適用期限が2030年12月31日の入居分まで延長されるとともに、中古住宅の控除期間や床面積の要件などが見直されています。ご自身の住宅の条件は、最新の情報で確認しましょう。
主な適用要件
- 住宅の取得から6か月以内に入居し、適用を受ける年の12月31日まで引き続き住んでいること
- 床面積が一定以上であること(原則50㎡以上。所得要件などを満たす場合は40㎡以上)
- 床面積の2分の1以上が、もっぱら自分の居住用であること
- 合計所得金額が一定額以下であること
- 返済期間10年以上の住宅ローンであること
自宅兼事務所で特に問題になるのが、3つ目の「床面積の2分の1以上が居住用」という要件です。
自宅兼事務所は「居住用の部分」だけが控除の対象
自宅兼事務所の場合、住宅ローンのうち居住用の部分に対応する金額だけが、住宅ローン控除の対象になります。事業用の部分は、住宅ローン控除の対象にはなりません。
控除額 = 年末のローン残高 × 居住用割合 × 0.7%
※ローン残高は借入限度額が上限。土地と建物でローンが分かれている場合などは、それぞれ居住用割合で計算します。
居住用割合の計算方法
居住用割合は、基本的に床面積で計算します。
- 仕事専用の部屋がある場合:居住用割合 =(家全体の床面積 - 仕事専用部分の床面積)÷ 家全体の床面積
- 居住と事業の両方に使う部分(併用部分)がある場合:玄関や廊下、トイレなどの併用部分は、居住専用部分と事業専用部分の床面積の比率で按分して、居住用の床面積に加えて計算するのが一般的です。
たとえば、家全体が100㎡で、仕事専用の部屋が30㎡、それ以外はすべて居住用であれば、居住用割合は70%です。
居住用が90%以上なら全体を居住用として扱える
居住用の部分の割合がおおむね90%以上の場合は、家全体を居住用として、住宅ローン控除の計算ができるとされています。仕事に使うのが書斎の一角程度であれば、控除が減ることを気にしなくてよいケースもあります。
ただし、その場合に、事業用の部分を経費として計上することとの整合性には注意が必要です。同じ部分について、住宅ローン控除と経費の両方の恩恵を受けることはできないのが原則なので、判断に迷う場合は税理士に確認しましょう。
事業割合が高いと控除が減る仕組み
自宅兼事務所では、事業用の部分にかかる費用を経費にできます。一方で、事業用の部分は住宅ローン控除の対象外になります。つまり、事業割合を上げるほど経費は増え、住宅ローン控除は減るという関係です。
| 居住用の部分 | 事業用の部分 | |
|---|---|---|
| 住宅ローン控除 | 対象になる | 対象にならない |
| 建物の減価償却費 | 経費にならない | 経費になる |
| 住宅ローンの利息 | 経費にならない | 経費になる(元本の返済分は経費にならない) |
| 固定資産税・火災保険料など | 経費にならない | 経費になる |
家を買った場合、事業用部分の経費は、家賃ではなく減価償却費、ローンの利息、固定資産税、火災保険料などが中心になります。賃貸のときの家賃の按分とは、経費にできるものが変わる点に注意しましょう。
事業割合が50%を超えると控除がゼロに
住宅ローン控除は、床面積の2分の1以上が居住用であることが要件です。そのため、事業用の部分が半分を超えると、居住用の部分が残っていても、住宅ローン控除はまったく受けられなくなります。
| 事業用の割合(床面積) | 住宅ローン控除 |
|---|---|
| 10%以下(居住用90%以上) | 全体を居住用として計算できる |
| 10%超〜50%以下 | 居住用割合の分だけ受けられる |
| 50%超 | 受けられない |
「家の半分を仕事部屋として使っている」という場合は、まさにこの境目です。居住用の部分がぎりぎり2分の1以上になるのか、少しでも下回るのかで、控除を受けられるかどうかが変わります。図面で床面積を正確に確認し、余裕をもった使い方にしておくと安心です。
なお、リビングの一角で仕事をしているなど、部屋を時間で分けて使っている場合は、経費の按分では使用時間の割合を使うこともあります。住宅ローン控除の居住用割合と、経費の事業割合は、同じ考え方で矛盾のないように決めておくことが大切です。
計算例:事業割合30%の場合
次のような条件で、事業割合を30%にした場合と0%(すべて居住用)の場合を比べてみます(話をわかりやすくするための概算の例です)。
- 家全体の床面積:100㎡(仕事専用の部屋:30㎡)
- 年末のローン残高:3,000万円(借入限度額の範囲内とする)
- その年に支払ったローンの利息:30万円
- 建物の取得価額:2,500万円(新築の木造住宅、事業用の耐用年数22年・定額法の償却率0.046)
- 固定資産税:15万円
- 所得税と住民税をあわせた税率:30%と仮定
住宅ローン控除の比較
| 事業割合0% | 事業割合30% | |
|---|---|---|
| 控除の対象となる残高 | 3,000万円 | 3,000万円 × 70% = 2,100万円 |
| 住宅ローン控除の額 | 210,000円 | 147,000円 |
事業割合を30%にすると、住宅ローン控除は年63,000円減ります。
経費による節税効果
| 経費 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 減価償却費 | 2,500万円 × 30% × 0.046 | 345,000円 |
| ローンの利息 | 30万円 × 30% | 90,000円 |
| 固定資産税 | 15万円 × 30% | 45,000円 |
| 経費の合計 | 480,000円 | |
経費が48万円増えると、税率30%と仮定した場合、税金は約144,000円少なくなります。この例では、住宅ローン控除が63,000円減っても、経費による節税効果のほうが大きいことになります。
単純に比べられない3つの注意点
- 住宅ローン控除は「税額」が上限:控除額が所得税(と住民税の一部)を上回ると、控除しきれない分は切り捨てられます。所得が少ない年は、住宅ローン控除を減らしても失うものが小さいこともあれば、経費を増やしても節税効果が小さいこともあります。
- 住宅ローン控除には期間がある:住宅ローン控除は一定期間で終わりますが、減価償却は耐用年数の間続きます。何年分を比べるかで結果が変わります。
- 売却するときに影響する:家を売って利益が出た場合の「居住用財産の3,000万円特別控除」は、原則として居住用の部分にしか使えません。また、事業用の部分は、経費にした減価償却費の分だけ取得費が少なくなるため、売却したときの利益が大きく計算されます。
事業割合は、節税の損得だけで決めるのではなく、実際の使用状況に合った割合にすることが大前提です。実態より高い割合にすると、税務調査で否認されるおそれがあります。
自宅兼事務所の住宅ローン控除で注意したいこと
事業割合は実態に合わせ、根拠を残す
事業用の部分の床面積は、間取り図などで確認できるようにしておきましょう。仕事専用の部屋であれば、写真を残しておくのも有効です。賃貸のときと同じように、按分の根拠を残しておくことが大切です。
家賃・光熱費・通信費の按分の考え方は、「個人事業主の家賃・光熱費・通信費の按分の計算方法」でも解説しています。
事業割合が途中で変わった場合
住宅ローン控除の居住用割合は、その年の使用状況で判定します。仕事部屋を増やしたり、逆に仕事部屋を居住用に戻したりした場合は、その年から割合が変わります。事業用の部分が半分を超える年は、その年の住宅ローン控除は受けられません。
1年目は確定申告が必要
住宅ローン控除を受ける1年目は、確定申告が必要です。自宅兼事務所の場合は、住宅ローン控除の計算明細書に、家屋の床面積のうち居住用部分の床面積などを記入して計算します。個人事業主は、毎年の確定申告の中で、住宅ローン控除も申告します。
法人化している場合は考え方が異なる
自分の会社に、自宅の一部を事務所として貸している場合などは、個人事業主とは考え方が異なります。ひとり社長の自宅兼事務所の扱いについては、「自宅兼事務所の家賃、個人事業主時代と同じ按分でいい?ひとり社長が経費にする2つの方法」で解説しています。
確定申告をラクにするなら
自宅兼事務所を持つ個人事業主は、減価償却費の計算や、ローン利息・固定資産税の按分、住宅ローン控除の申告など、確定申告で扱う項目が増えます。会計ソフトを使えば、固定資産台帳での減価償却の管理から、確定申告書の作成、e-Taxでの提出までまとめて行えます。
代表的なサービスとして「マネーフォワード クラウド」と「freee会計」があります。無料で試せるプランが用意されていることも多いので、実際の画面を触って使いやすいほうを選ぶのがおすすめです。
マネーフォワード クラウド
会計・確定申告・請求書などのサービスをまとめて提供しており、複数の業務を一つのシリーズで管理したい方に向いています。
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※対応機能や料金プランは変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
確定申告の書き方を本で確認したい方へ
住宅ローン控除の1年目の申告は、計算明細書の書き方など、初めてだと迷うポイントがいくつもあります。記入例を見ながら進めたい方は、確定申告の解説書を一冊手元に置いておくと安心です。
※書籍は税制改正にあわせて毎年改訂されます。購入の際は最新年度版かどうかをご確認ください。
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まとめ
- 自宅兼事務所でも住宅ローン控除は受けられるが、対象は居住用の部分だけ
- 控除額は「年末のローン残高 × 居住用割合 × 0.7%」が基本。居住用割合は床面積で計算する
- 居住用がおおむね90%以上なら、全体を居住用として計算できるとされている
- 事業用の部分が床面積の半分を超えると、住宅ローン控除は受けられない
- 事業割合を上げると、減価償却費・ローン利息・固定資産税などの経費は増えるが、住宅ローン控除は減る
- 損得は、所得の大きさ、控除期間、将来の売却時の3,000万円特別控除なども含めて考える
- 事業割合は実態に合わせ、間取り図などの根拠を残す
- 住宅ローン控除は改正が多いため、申告する年の最新のルールを確認する
自宅兼事務所の事業割合は、一度決めると、住宅ローン控除、毎年の経費、将来の売却と、長い期間にわたって影響します。家を買う前や、最初の確定申告の前に、一度シミュレーションしておきましょう。判断に迷う場合は、税務署や税理士に相談しましょう。
※本記事は2026年11月時点の税法・制度の情報をもとに作成しています。住宅ローン控除をはじめ、税法のルールは改正されることがあるため、実際に申告をする際は国税庁などの最新情報を確認し、個別の判断については税理士等の専門家にご確認ください。

