個人事業主の国民健康保険料はどう決まるか|所得との関係と、負担を抑えるためにできること

「毎年6月に届く国民健康保険料の通知を見るたびに、高いと感じる」「所得税は確定申告で計算しているけど、国保の金額はどうやって決まっているの?」「iDeCoや小規模企業共済に入れば、国保も安くなる?」——個人事業主にとって、国民健康保険料(国保料)は、所得税や住民税と並んで大きな負担です。

国保料は、前年の所得をもとに、お住まいの市区町村が決めた料率で計算されます。そして、ここが大事なポイントですが、国保料の計算では、所得税で使える所得控除の多くが差し引かれません。そのため、所得税の節税策が、国保料の節約にはつながらないこともあります。

この記事では、国保料の計算の仕組みと、所得との関係、負担を抑えるために本当に効果がある方法をわかりやすく解説します。

なお、国民健康保険料の料率や上限額、軽減の基準は、市区町村ごとに異なり、毎年見直されます。本記事は一般的な仕組みを解説したものですので、実際の金額は、お住まいの市区町村の最新情報を確認するようにしてください。

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国民健康保険料の内訳

国保料は、次の区分ごとに計算した金額を合計したものです。

区分 対象となる人
医療分(基礎分) 加入者全員
後期高齢者支援金分 加入者全員
介護分 40歳〜64歳の加入者
子ども・子育て支援金分 加入者全員(2026年度から新たに加わった)

それぞれの区分は、主に次の2つの組み合わせで計算されます(自治体によっては、世帯ごとの「平等割」などがある場合もあります)。

  • 所得割:加入者の所得に応じた部分
  • 均等割:加入者1人あたりいくら、と決まっている部分

また、区分ごとに年間の上限額(賦課限度額)が決まっていて、所得がどれだけ多くても、それ以上の保険料はかかりません。上限額は、すべての区分を合計すると年間100万円を超える水準に設定されています。

保険料は「世帯」単位で計算される

国保料は、世帯に属する国保の加入者全員の分を合計して、世帯主に請求されます。会社員の健康保険と違って、「扶養」という考え方がないため、家族の人数が増えると、その分均等割が増えます。

所得割の計算のもとになる「所得」

所得割は、次の金額に、市区町村が決めた所得割率をかけて計算します。

所得割の計算のもとになる所得 = 前年の総所得金額等 - 基礎控除(43万円)

ここでいう「総所得金額等」は、個人事業主なら売上から経費と青色申告特別控除を差し引いた事業所得などの合計です。そこから、住民税の基礎控除(43万円)だけを差し引きます。これを「旧ただし書き所得」と呼ぶこともあります。

差し引かれるもの・差し引かれないもの

国保料の所得割を減らせるもの 国保料の所得割を減らせないもの
・事業の経費
・青色申告特別控除
・青色事業専従者給与(事業所得から差し引かれる)
・経営セーフティ共済の掛金(事業の経費になる)
・小規模企業共済の掛金
・iDeCoの掛金
・国民年金・国民健康保険などの社会保険料控除
・生命保険料控除・地震保険料控除
・医療費控除
・扶養控除・配偶者控除
・ふるさと納税(寄附金控除)

つまり、国保料を減らせるのは、事業所得そのものを小さくするもの(経費や青色申告特別控除)で、確定申告で差し引く所得控除は、原則として国保料には影響しません。

「iDeCoや小規模企業共済で節税したのに、国保料が変わらなかった」という声があるのは、このためです。これらの制度は所得税・住民税を減らす効果はありますが、国保料を減らす効果はないと考えておきましょう。

計算例

ここでは、仕組みを理解するために、仮の料率を使って計算してみます。実際の料率は市区町村によって大きく異なります。

  • 所得割率(すべての区分の合計):11%と仮定
  • 均等割(すべての区分の合計):1人あたり年6万円と仮定
  • 40歳未満の単身世帯、軽減の対象外、上限額には達しないものとする
前年の事業所得(青色申告特別控除後) 所得割 均等割 年間の国保料
200万円 (200万円 - 43万円)× 11% = 約17.3万円 6万円 約23.3万円
400万円 (400万円 - 43万円)× 11% = 約39.3万円 6万円 約45.3万円
600万円 (600万円 - 43万円)× 11% = 約61.3万円 6万円 約67.3万円

この例では、事業所得が100万円増えると、国保料が約11万円増えることになります。所得税・住民税とあわせると、所得が増えた分の3〜4割以上が税金と保険料になることも珍しくありません。

青色申告特別控除の効果

同じ事業所得でも、青色申告特別控除を65万円受けられた場合と、10万円しか受けられなかった場合では、所得割のもとになる所得が55万円違います。上の仮の料率なら、国保料は年間約6万円違う計算です。所得税・住民税の差もあわせると、効果はさらに大きくなります。

国保料の通知と納付のスケジュール

  • 国保料は、4月から翌年3月までの年度単位で計算される
  • 計算のもとになるのは前年(1月〜12月)の所得。確定申告や住民税の申告の内容が使われる
  • 多くの自治体では、6月ごろに1年分の保険料の通知が届き、6月から翌年3月までの10回などに分けて納付する

前年の所得にもとづいて計算されるため、事業を始めた翌年や、売上が大きく伸びた翌年に、急に国保料が高くなったと感じることが多いのです。反対に、所得が大きく下がった年の翌年は、国保料も下がります。

なお、確定申告をしていないと、所得が把握できないため、軽減が受けられないことがあります。所得が少ない年でも、確定申告や住民税の申告はしておきましょう。

国保料の負担を抑えるためにできること

1. 経費を漏れなく計上する

事業に必要な支出を経費として正しく計上すれば、事業所得が減り、国保料の所得割も減ります。家賃・光熱費・通信費などの按分も含めて、計上漏れがないか確認しましょう。按分の考え方は「個人事業主の家賃・光熱費・通信費の按分の計算方法」で解説しています。もちろん、私的な支出を経費にするのは厳禁です。

2. 青色申告特別控除65万円を受ける

青色申告で、複式簿記での記帳、貸借対照表の添付、e-Taxでの期限内の申告(または電子帳簿の保存)などの要件を満たせば、65万円の控除を受けられます。所得税だけでなく、住民税と国保料のすべてに効く、もっとも基本的で効果の大きい方法です。期限内に申告できなかった場合は控除が10万円になってしまうので注意しましょう。e-Taxの注意点は「e-Taxで申告したつもりが無申告になっていたケース」をご覧ください。

3. 青色事業専従者給与を活用する

家族が事業を手伝っている場合は、青色事業専従者給与として給与を支払うことで、事業所得を減らせます。家族の側では給与所得になり、給与所得控除が差し引かれるため、世帯全体で見ても国保料の計算のもとになる所得が減る場合があります。ただし、届出や、実際に事業に従事していることなどの要件があり、家族が国保に加入しているかどうかによっても効果は変わります。

4. 経営セーフティ共済を検討する

経営セーフティ共済(倒産防止共済)の掛金は、事業所得の必要経費になるため、国保料の所得割も減らせます。ただし、解約したときの解約手当金は事業所得の収入になり、その年の国保料が上がります。課税の先送りであることを理解したうえで検討しましょう。詳しくは「個人事業主の経営セーフティ共済」で解説しています。

5. 軽減・減免の制度を確認する

  • 均等割の軽減(7割・5割・2割):世帯の所得が一定以下の場合、均等割(自治体によっては平等割も)が軽減される
  • 未就学児の均等割の軽減:未就学児の均等割は5割軽減される。2026年度から加わった子ども・子育て支援金分については、18歳以下の子どもの均等割が軽減される仕組みもある
  • 産前産後の保険料の免除:出産する加入者は、出産予定月の前月から4か月間(多胎妊娠の場合は6か月間)の保険料の一部が免除される(届出が必要)
  • 災害や所得の急減などによる減免:事業の休廃止などで所得が大きく減った場合に、自治体独自の減免制度がある場合もある

軽減・減免の内容や申請方法は、市区町村によって異なります。該当しそうな場合は、お住まいの市区町村の国保の窓口に問い合わせてみましょう。

6. 国民健康保険組合への加入を検討する

業種によっては、市区町村の国保ではなく、同業者でつくる国民健康保険組合(国保組合)に加入できる場合があります。国保組合の中には、所得に関係なく保険料が定額のところもあり、所得が多い人ほど負担が軽くなることがあります。加入できる業種や保険料、保障の内容は組合ごとに異なるため、比べて検討しましょう。

7. 法人成りで社会保険に切り替える

所得が大きくなってきたら、法人成りをして、健康保険・厚生年金に加入する方法もあります。ただし、社会保険料は役員報酬に応じて計算され、会社負担分も含めると負担がかえって増えることもあります。損得の考え方は「法人成りは所得いくらから得になるか」で解説しています。

国保料は「社会保険料控除」で所得税・住民税を減らせる

支払った国保料は、全額が社会保険料控除の対象になり、所得税と住民税を減らせます。家族の国保料を世帯主がまとめて支払っている場合は、支払った人がまとめて控除を受けられます。確定申告のときは、その年に実際に支払った金額を、市区町村から届く納付額の通知などで確認して記入しましょう。

経費と申告の管理をラクにするなら

国保料を抑えるための基本は、経費を正しく計上し、青色申告特別控除65万円を確実に受けることです。会計ソフトを使えば、日々の帳簿付けから、複式簿記での決算書の作成、e-Taxでの申告までまとめて行え、65万円控除の要件も満たしやすくなります。

代表的なサービスとして「マネーフォワード クラウド」と「freee会計」があります。無料で試せるプランが用意されていることも多いので、実際の画面を触って使いやすいほうを選ぶのがおすすめです。

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まとめ

  • 国保料は、医療分・後期高齢者支援金分・介護分(40〜64歳)・子ども・子育て支援金分(2026年度から)の合計で、それぞれ所得割と均等割などで計算される
  • 所得割のもとになるのは、前年の総所得金額等 - 基礎控除43万円。世帯単位で計算され、扶養の考え方はない
  • 経費や青色申告特別控除は国保料を減らすが、iDeCo・小規模企業共済・医療費控除などの所得控除は国保料を減らさない
  • 負担を抑えるには、経費の計上、青色65万円控除、専従者給与、経営セーフティ共済、軽減・減免の確認、国保組合、法人成りなどを検討する
  • 支払った国保料は社会保険料控除で所得税・住民税を減らせる
  • 料率や上限額、軽減の基準は市区町村ごとに異なり毎年見直されるため、最新の情報を確認する

国保料の仕組みがわかると、「どの節税策が国保にも効くのか」が見えてきます。まずは前年の確定申告書と国保料の通知を並べて、自分の保険料がどう計算されているかを確認してみましょう。判断に迷う場合は、市区町村の窓口や税理士に相談しましょう。

※本記事は2026年11月時点の制度の情報をもとに作成しています。国民健康保険料の料率・賦課限度額・軽減の基準などは市区町村ごとに異なり、毎年見直されるため、実際の金額はお住まいの市区町村の最新情報を確認し、個別の判断については専門家にご確認ください。

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