税務調査の通知が来てから当日までの流れ|任意調査で準備することと、重加算税がつく分かれ目
「税務署から電話があって、来月、税務調査に伺いたいと言われた」「何を準備すればいいの?」「どこまで見られる?もしミスが見つかったら、どうなるの?」——税務調査の連絡は、ある日突然やってきます。初めての方にとっては、とても不安なものです。
ただ、多くの中小企業や個人事業主が受けるのは、納税者の同意と協力のもとで行われる「任意調査」です。調査の流れと準備することを知っておけば、必要以上に恐れることはありません。一方で、帳簿や書類を隠したり、書き換えたりすると「重加算税」という重いペナルティの対象になります。
この記事では、税務調査の通知が来てから当日、調査の終了までの流れと、準備しておくこと、そして重加算税がつくかどうかの分かれ目をわかりやすく解説します。
なお、加算税の割合などは改正されることがあります。本記事は執筆時点の情報をもとにしていますので、実際に対応する際は、国税庁などの最新情報を確認し、税理士に相談するようにしてください。
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税務調査には「任意調査」と「強制調査」がある
| 任意調査 | 強制調査(査察) | |
|---|---|---|
| 行うのは | 税務署・国税局の調査担当者 | 国税局の査察部(いわゆる「マルサ」) |
| 対象 | 一般の法人・個人事業主 | 悪質で多額の脱税が疑われるケース |
| 方法 | 原則として事前に通知し、納税者の協力のもとで帳簿などを確認 | 裁判所の令状にもとづき、強制的に捜索・差押え |
| その後 | 修正申告や更正などで税金を精算 | 刑事告発されることもある |
この記事で解説するのは、ほとんどの人が受ける任意調査です。「任意」とはいっても、調査官の質問に答えたり、帳簿書類を見せたりすることには応じる義務(受忍義務)があり、正当な理由なく拒んだり、うその答えをしたりすると罰則の対象になります。誠実に協力するのが基本です。
なお、税務署から届く「お尋ね」の文書は、税務調査とは別のものです。違いは「税務署から『お尋ね』が届いたらどうする?」で解説しています。
通知から調査終了までの流れ
| 段階 | 時期の目安 | やること |
|---|---|---|
| ① 事前通知 | 調査の数週間前 | 電話で連絡が来る。日時・対象期間などを確認する |
| ② 準備 | 通知から当日まで | 税理士に連絡し、帳簿・書類をそろえ、申告内容を見直す |
| ③ 調査当日 | 1日〜数日 | 事業内容のヒアリング、帳簿・書類の確認 |
| ④ 追加の確認 | 当日後〜数週間 | 追加の資料の提出や、質問への回答 |
| ⑤ 結果の説明 | 調査の終わり | 指摘事項の説明(講評)。問題がなければ終了 |
| ⑥ 修正申告・納付 | 結果の説明の後 | 指摘があれば修正申告(または更正)をして納付する |
① 事前通知で伝えられること
任意調査では、原則として、調査を始める前に、納税者(税理士がいる場合は税理士にも)へ電話などで事前通知があります。事前通知では、主に次のことが伝えられます。
- 調査を始める日時と場所
- 調査の目的
- 調査の対象となる税目(法人税、消費税、源泉所得税など)
- 調査の対象となる期間(一般的には過去3年分が多い)
- 調査の対象となる帳簿書類など
日時の都合が悪い場合は、合理的な理由があれば変更を相談できます。慌ててその場で決めず、税理士と相談してから日程を返事してもかまいません。
なお、現金取引が多い業種などでは、事前通知なしで調査が行われる無予告調査もあります。
② 当日までに準備すること
- 税理士に連絡する:顧問税理士がいればすぐに連絡し、立ち会いを依頼する。いない場合も、調査対応を依頼できる税理士を探す
- 帳簿書類をそろえる:対象期間の総勘定元帳、仕訳帳、決算書、申告書の控え、請求書・領収書、通帳、契約書、賃金台帳、議事録など
- 電子データも確認する:会計ソフトのデータ、電子で受け取った請求書などを、すぐに見せられる状態にしておく
- 申告内容を見直す:売上の計上漏れや、私的な支出が経費に入っていないかなどを確認する
- 説明できるようにしておく:金額の大きい取引や、判断に迷った経費について、内容と理由を説明できるよう整理しておく
見直しの中でミスに気づいた場合は、税理士と相談のうえ、調査の前に修正申告をすることも検討しましょう。調査の通知を受けた後でも、調査で指摘される前に自主的に修正すれば、加算税が軽くなります(後述)。
ただし、帳簿や書類を書き換えたり、捨てたり、つじつまを合わせるために新しく作ったりすることは絶対にやめましょう。それ自体が、重加算税の対象となる「隠ぺい・仮装」にあたります。
③ 調査当日の流れ
中小企業や個人事業主の場合、調査は1日〜2日程度で行われることが多く、一般的には次のような流れです。
- 午前:あいさつの後、事業の内容、取引先、売上や仕入れの流れ、社長の経歴などについてのヒアリング
- 昼休み:調査官は外で昼食をとるのが一般的。食事を用意する必要はない
- 午後:帳簿や請求書・領収書、通帳などの確認。気になる取引について質問される
- 終わりに:追加で必要な資料の確認と、次の日程の調整
質問には、わかることは正直に、わからないことは「確認して後日回答します」と答えましょう。その場しのぎの推測やうその回答は、かえって不信感を招きます。机や金庫、パソコンの中を確認したいと言われた場合も、基本的には協力しつつ、私的なものとの区別などは税理士と相談しながら対応しましょう。
④〜⑥ 調査の結果と、その後の手続き
- 問題がなかった場合:「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」が届き、調査は終了する
- 指摘があった場合:調査結果の説明を受けたうえで、修正申告をするよう勧められることが多い。修正申告に応じない場合は、税務署が更正(税額を決定する処分)を行う
修正申告をすると、その内容について不服申立てができなくなる点には注意が必要です。指摘の内容に納得できない場合は、税理士と相談して対応を決めましょう。指摘を受け入れる場合は、本来の税金に加えて、加算税と延滞税を納付します。
指摘されたらかかる加算税の種類
| 加算税 | どんなとき? | 割合の目安 |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 期限内に申告していたが、税額が少なかった | 増えた税額の10%(一定額を超える部分は15%) |
| 無申告加算税 | 期限内に申告していなかった | 原則15%(金額に応じて20%・30%) |
| 不納付加算税 | 源泉所得税を期限までに納付していなかった | 原則10% |
| 重加算税 | 事実を隠ぺい・仮装して、申告を少なくしていた | 過少申告の場合35%、無申告の場合40% |
※過去5年以内に重加算税などを課されている場合は、割合が加重されることがあります。また、帳簿の提出がない場合などに加算税が加重される制度もあります。
加算税は、いつ修正したかによっても変わります。
- 調査の通知を受ける前に自主的に修正申告 → 過少申告加算税はかからない
- 調査の通知の後、指摘される前に修正申告 → 過少申告加算税は5%(一定額を超える部分は10%)に軽減
- 調査で指摘を受けた後に修正申告 → 原則どおりの割合
このほか、本来の納付期限から納付した日までの日数に応じて延滞税もかかります。申告後にミスに気づいたときの修正方法については、「法人税の申告期限と延長の特例」でも触れています。
重加算税がつく分かれ目
税務調査でいちばん避けたいのが重加算税です。通常の過少申告加算税(10%)に比べて、割合が35%と大きく、さらに税務署が税額を見直せる期間も、通常の5年から7年に延びます。
重加算税がつくかどうかの分かれ目は、「隠ぺい・仮装」があったかどうかです。単なるミスや、税法の解釈の違いでは、原則として重加算税はかかりません。
| 重加算税の対象になりうる例(隠ぺい・仮装) | 原則として重加算税の対象にならない例 |
|---|---|
| ・売上の一部を別の口座に入金させ、帳簿に載せなかった ・架空の外注費や人件費を計上した ・領収書や請求書の日付・金額を書き換えた ・取引先に頼んで、事実と違う請求書を作ってもらった ・二重帳簿を作っていた ・帳簿や書類を意図的に破棄・隠した ・棚卸資産を意図的に少なく計上した |
・売上の計上時期を誤った(翌期に計上していた) ・計算ミスや転記ミス ・経費になるかどうかの判断の違い(按分割合の考え方など) ・税法の解釈の誤り ・領収書の紛失(意図的でない場合) |
ポイントは、「わざと隠したり、事実と違うものを作ったりしたか」です。たとえば、私的な飲食代を交際費にしていた場合でも、相手や目的を偽った記録を作っていれば仮装と判断されるおそれがあります。一方、判断に迷って経費にしたものが否認された、というだけなら、通常は過少申告加算税の対象です。
だからこそ、調査の通知を受けた後に、帳簿や書類をいじってはいけないのです。もともとはただのミスだったものが、書き換えをしたことで「仮装」になってしまいます。
経費の判断で迷いやすい飲食代については「法人の交際費・会議費・福利厚生費の区分け」、電子データの保存ルールについては「電子帳簿保存法の基本」もあわせてご覧ください。
税務調査に備えて、ふだんからできること
- 毎月記帳する:決算期にまとめて帳簿をつけると、ミスや根拠のない処理が増えやすい
- 証拠書類を保存する:請求書・領収書・契約書などを、法定の期間、すぐに出せる状態で保存する
- 判断の理由をメモする:家事按分の割合、交際費の相手と目的など、迷った処理は理由を残しておく
- 会社と個人のお金を分ける:事業用の口座とカードを使い、私的な支出を混ぜない
- ミスに気づいたら早めに修正する:調査の通知の前に自主的に修正すれば、過少申告加算税はかからない
- 相談できる税理士を決めておく:いざというときに立ち会ってもらえる体制をつくっておく
税務調査に強い帳簿をつくるなら
税務調査で大切なのは、取引の内容を、証拠とともにすぐに説明できることです。会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードの明細と仕訳がひもづき、領収書の画像やメモも取引ごとに残せます。調査で質問されたときも、該当する取引と証拠をすぐに探し出せます。
代表的なサービスとして「マネーフォワード クラウド」と「freee会計」があります。無料で試せるプランが用意されていることも多いので、実際の画面を触って使いやすいほうを選ぶのがおすすめです。
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会計・確定申告・請求書などのサービスをまとめて提供しており、複数の業務を一つのシリーズで管理したい方に向いています。
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簿記の知識が少なくても使いやすい画面づくりが特徴で、経理初心者や個人事業主・小規模な会社に向いているクラウド会計ソフトです。
※対応機能や料金プランは変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
まとめ
- 多くの人が受けるのは任意調査。原則として事前通知があり、日時・対象期間・税目などが伝えられる
- 通知が来たら、税理士に連絡し、帳簿書類をそろえ、申告内容を見直す。日程は相談して決めてよい
- 調査当日は、わかることは正直に、わからないことは後日回答。うその回答はしない
- 指摘があれば修正申告(または更正)。加算税は修正のタイミングで変わり、調査の通知の後でも指摘前なら軽減される
- 重加算税(35%・40%)の分かれ目は「隠ぺい・仮装」があったかどうか。ミスや判断の違いだけなら原則対象外
- 通知の後に帳簿や書類を書き換える・捨てるのは絶対にNG。ただのミスが「仮装」になってしまう
- 加算税の割合などは改正されることがあるため、最新の情報を確認し、税理士に相談する
税務調査は、ふだんの経理がそのまま問われる場です。毎月の記帳と証拠の保存、判断の理由のメモを積み重ねておけば、調査の連絡が来ても落ち着いて対応できます。不安なときは、一人で抱え込まずに税理士に相談しましょう。
※本記事は2026年11月時点の税法の情報をもとに作成しています。加算税の割合や調査の手続きなどは改正されることがあるため、実際に対応する際は国税庁などの最新情報を確認し、個別の判断については税理士等の専門家にご確認ください。

