私用でETC・高速道路を使った費用は経費になる?私用分の処理と仕事との区別のしかた
「仕事用のETCカードで、家族旅行の高速代も払ってしまった」「1枚のETCカードを仕事とプライベートの両方で使っている」——個人事業主や会社経営者の方から、よく聞かれる悩みです。
結論から言うと、私用でETCを使って高速道路を利用した費用は経費になりません。仕事用のETCカードで払ったとしても、私用分は経費から外す必要があります。この記事では、私用分の正しい処理方法と、仕事とプライベートを区別するための記録の残し方、インボイス制度への対応をわかりやすく解説します。
なお、税法は税制改正などによって変わることがあります。本記事は執筆時点のルールをもとにしていますので、実際に経費計上する際は、その時点の最新情報を国税庁のWebサイトなどで確認するようにしてください。
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私用の高速道路料金は経費にならない
経費として認められるのは、事業を営むために必要な支出です。次のような私用での高速道路の利用は、どのカードで支払ったかに関係なく、経費にはなりません。
- 家族旅行やレジャー、帰省
- 買い物や通院など、日常生活での移動
- 友人との遊びや趣味のための移動
「会社名義のETCカードで払ったから経費」「事業用の口座から引き落とされたから経費」ということにはなりません。判断の基準は、あくまでその移動が業務のためだったかどうかです。
経費になる高速道路料金・ならない高速道路料金
| 利用目的 | 経費になる? | 主な勘定科目 |
|---|---|---|
| 取引先への訪問、打ち合わせ | ◯ なる | 旅費交通費 |
| 商品の配送・仕入れ、現場への移動 | ◯ なる | 旅費交通費 |
| 出張先への移動 | ◯ なる | 旅費交通費 |
| 出張の帰りに観光地へ寄り道した部分 | ✕ その部分はならない | (私用) |
| 家族旅行・帰省・レジャー | ✕ ならない | (私用) |
| 買い物・通院など日常の移動 | ✕ ならない | (私用) |
出張のついでに私的な目的地へ寄った場合などは、業務に必要なルートの分だけを経費にし、寄り道した分は私用として区別します。
私用分を事業用のETCカードで払ってしまった場合の処理
個人事業主の場合:「事業主貸」で処理する
事業用のETCカードや口座で私用分の高速代を支払った場合は、経費にせず「事業主貸」として処理します。事業主貸は、事業のお金を個人的に使ったことを表す勘定科目です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費(業務分) | 3,200円 | 未払金(ETCカード) | 8,000円 |
| 事業主貸(私用分) | 4,800円 |
法人の場合:社長に精算してもらうか、役員への貸付として処理する
会社名義のETCカードで社長が私用の高速代を払った場合は、社長個人が会社に返すのが基本です。精算が済むまでは「役員貸付金」などで処理します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費(業務分) | 3,200円 | 未払金(ETCカード) | 8,000円 |
| 役員貸付金(私用分) | 4,800円 |
私用分を返してもらわずに会社の経費のままにしておくと、税務調査で社長個人への給与(役員賞与)と判断され、会社は損金にできず、社長個人にも所得税がかかる可能性があります。従業員が私用で使った分を会社が負担した場合も、その従業員への給与として課税される可能性があります。
仕事とプライベートを区別するための方法
1. ETCカードを仕事用と私用で分ける
もっとも確実なのは、仕事用とプライベート用でETCカードを分けることです。法人の場合は、法人カードに付帯するETCカードを社用車専用にするのがおすすめです。車載器にカードを差し替えるだけで、明細が自動的に分かれ、私用分を探す手間がなくなります。
2. ETC利用照会サービスで利用履歴を確認する
高速道路会社の「ETC利用照会サービス」に登録すると、ETCカードごとに利用日時、入口・出口のインターチェンジ、料金を確認できます。毎月この履歴を見ながら、業務での利用と私用を区別しましょう。
3. 運転日報やスケジュールと照らし合わせる
利用履歴だけでは、その日の移動が業務だったのかどうかまではわかりません。運転日報や手帳・カレンダーの予定に、行き先と目的(例:〇〇社訪問、現場作業)を残しておき、ETCの利用履歴と照らし合わせると、税務調査でも説明しやすくなります。
4. 1枚のカードで兼用する場合は「家事按分」
個人事業主が1枚のETCカードを仕事と私用で兼用している場合は、利用履歴をもとに業務分と私用分を分けるのが原則です。区別が難しい場合は、走行記録などにもとづいた合理的な割合で家事按分しますが、「なんとなく8割」ではなく、根拠のある割合にしておくことが大切です。
インボイス制度への対応:ETCの領収書はどれを保存する?
消費税の課税事業者が、高速道路料金の消費税を仕入税額控除するには、原則としてインボイス(適格請求書)の保存が必要です。
- クレジットカードの利用明細:支払いの記録にはなりますが、インボイスとしては認められません。
- ETC利用照会サービスの利用証明書:利用料金が確定した後に発行される利用証明書は、電子の適格簡易請求書(電子インボイス)として扱われます。料金が確定する前に発行したものや、料金所で受け取る利用証明書は、インボイスに対応していない場合があるため注意しましょう。
ETC利用照会サービスからダウンロードした利用証明書は、電子データで受け取った書類なので、電子帳簿保存法のルールに沿って電子データのまま保存する必要があります。なお、私用分は経費ではないため、仕入税額控除の対象にもなりません。
ETCマイレージのポイントにも注意
ETCマイレージサービスなどで貯まったポイントを通行料金の支払いに使った場合、その分は実際には支払っていないため、経費にできるのは実際に支払った金額だけです。業務で貯めたポイントを私用の高速代に使った場合の扱いなど、判断に迷うケースは税理士に確認しましょう。
経費管理をラクにするなら
ETCの利用明細を毎月取り込み、業務分と私用分を区別して仕訳するのは手間がかかります。クラウド会計ソフトを使えば、カードの利用明細を自動で取り込み、科目の振り分けやメモの記録、決算書の作成までまとめて管理しやすくなります。
代表的なサービスとして「マネーフォワード クラウド」と「freee会計」があります。無料で試せるプランが用意されていることも多いので、実際の画面を触って使いやすいほうを選ぶのがおすすめです。
マネーフォワード クラウド
会計・請求書・経費精算などのサービスをまとめて提供しており、複数の業務を一つのシリーズで管理したい方に向いています。
freee会計
簿記の知識が少なくても使いやすい画面づくりが特徴で、経理初心者や個人事業主・小規模な会社に向いているクラウド会計ソフトです。
※対応機能や料金プランは変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
まとめ
- 私用でETCを使った高速道路料金は、どのカードで払っても経費にならない
- 個人事業主は「事業主貸」、法人は社長に精算してもらう(精算前は「役員貸付金」)
- 法人で私用分を経費のままにすると、役員賞与・給与と判断されるリスクがある
- ETCカードを仕事用と私用で分けるのがもっとも確実。兼用なら利用履歴と運転日報で区別する
- インボイスは、料金確定後にETC利用照会サービスで発行される利用証明書を電子データのまま保存する
- 税法は改正されることがあるため、経費計上の時点で最新のルールを確認する
毎月の利用履歴を確認する習慣をつけて、仕事とプライベートをきちんと区別しておきましょう。判断に迷う場合は、税理士に相談するのが安心です。
※本記事は2026年11月時点の税法・情報をもとに作成しています。税法は税制改正などにより変わることがあるため、実際に経費計上する際は国税庁のWebサイトなどで最新の情報を確認し、個別の判断については税理士等の専門家にご確認ください。

