役員報酬は「いくら」が正解?年商1,000万円のひとり社長で手取りと税金をシミュレーション
「役員報酬って、結局いくらにすればいいの?」――会社を作ったひとり社長が最初にぶつかる、そして一番大事な悩みです。
結論から言うと、「生活に必要なお金」を役員報酬にして、残りは会社に残しておくのが基本の考え方です。そして決めた金額は、事業年度が始まってから3か月以内に決め、毎月同じ額で支払うことが絶対のルールです。この記事では、年商1,000万円のケースで具体的に試算しながら解説します。
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役員報酬は「期首から3か月以内に決めて、毎月同額」が鉄則
結論:役員報酬を会社の経費にするには、事業年度の開始から3か月以内に金額を決め、その年度中は毎月同じ額を払い続ける必要があります。
このルールを定期同額給与(ていきどうがくきゅうよ)といいます。つまり「毎月決まった同じ額の給料でなければ、会社の経費として認めない」ということです。
なぜこんなルールがあるのでしょうか。ひとり社長は、自分の給料を自分で決められます。もし自由に変えられるなら、「今月は利益が出たから給料を増やして会社の税金を減らそう」ということができてしまいます。それを防ぐためのルールです。
- 金額は、事業年度開始から3か月以内に株主総会(ひとり社長なら自分ひとりの総会)で決める
- 決めた内容は株主総会議事録に残しておく
- 途中で増額した場合、増えた分は会社の経費になりません(詳しくは24日目の記事で解説します)
個人事業主のときは、儲かった月に多めに生活費を引き出しても何も問題ありませんでした。法人ではそれができない、というのが大きな違いです。
年商1,000万円なら手取りと税金はこう変わる(シミュレーション)
結論:役員報酬を低くするほど「税金と社会保険料の合計」は少なくなりますが、その分お金は会社に残り、社長が自由に使えるお金は減ります。
次の条件で、役員報酬の額を変えたときの違いを試算しました。
- 年商1,000万円、役員報酬以外の経費200万円(役員報酬を払う前の利益は800万円)
- 社長は40歳未満、東京都、協会けんぽに加入、扶養家族なし
| 役員報酬(年額) | 社会保険料(会社+本人) | 法人税等 | 所得税+住民税 | 社長の手取り | 会社に残るお金 | 税金と社会保険料の合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0円 | 0円 | 約185万円 | 0円 | 0円 | 約615万円 | 約185万円 |
| 360万円(月30万円) | 約101万円 | 約90万円 | 約21万円 | 約288万円 | 約299万円 | 約213万円 |
| 480万円(月40万円) | 約135万円 | 約61万円 | 約34万円 | 約378万円 | 約191万円 | 約231万円 |
| 600万円(月50万円) | 約169万円 | 約32万円 | 約50万円 | 約465万円 | 約84万円 | 約251万円 |
※上の表は一定の前提を置いた概算です。実際の金額は、社会保険料率や税制改正、年齢・地域などによって変わります。
表から分かるのは、次の2つです。
- 役員報酬を上げるほど、社会保険料が大きく増える:社会保険料は会社と本人で合わせて報酬の約28%。報酬を増やすと、税金より社会保険料のほうが重くなりがちです。
- 役員報酬を0円にすると負担は最小だが、社長は1円も使えない:会社に残ったお金を個人で使おうとすると、配当(さらに税金がかかる)や役員貸付金(4日目の記事で解説)になってしまいます。
つまり、「税金が一番少ない金額」がそのまま正解ではない、ということです。
正解は「生活費ベース」で決めて、残りは別の方法で受け取る
結論:まず生活に必要な手取り額から役員報酬を逆算し、それ以上のお金は会社に残して、社宅・出張手当・退職金などで合法的に受け取ります。
役員報酬の決め方は、次の3ステップで考えるのがおすすめです。
- 毎月の生活費を計算する:家賃、食費、教育費、貯金したい額など、個人として必要なお金を洗い出します。
- 手取りから役員報酬を逆算する:手取りは役員報酬のおおむね75〜80%程度です(報酬の額によって変わります)。手取り月25万円が必要なら、役員報酬は月32〜33万円前後が目安です。
- 今期の利益予想と照らし合わせる:役員報酬を払っても会社が赤字にならないかを確認します。会社の利益が年800万円を超えそうなら、法人税の税率が上がるため、報酬を増やす余地があります。
会社に残ったお金は、次のような方法で、税金を抑えながら社長の生活に役立てられます。
- 社宅制度:会社が借りた家に住み、家賃の大部分を会社の経費にする(7日目)
- 出張手当:旅費規程を作り、出張のたびに非課税の日当を受け取る(11日目)
- 役員退職金:将来の退職時に、税金の優遇を受けて受け取る(23日目)
社会保険料は「損」ばかりではない
結論:社会保険料は負担が大きいものの、将来の年金や病気・ケガのときの保障につながっています。単純に削るべきコストとは考えないでください。
役員報酬を極端に低くすると、社会保険料は減りますが、将来受け取る厚生年金も少なくなります。また、病気やケガで働けなくなったときの傷病手当金も、報酬額をもとに計算されます。
ひとり社長は「自分が倒れたら収入がゼロ」になりやすい立場です。保障とのバランスを見ながら金額を決めましょう。
役員報酬を払うときの仕訳
結論:役員報酬は「役員報酬」の科目で計上し、源泉所得税と社会保険料の本人負担分は「預り金」として差し引きます。
役員報酬月30万円、社会保険料の本人負担分42,000円、源泉所得税6,000円の場合の例です(金額は説明用の概算です)。
| 借方(科目) | 金額 | 貸方(科目) | 金額 | ポイント・摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 役員報酬 | 300,000 | 預り金(社会保険料) | 42,000 | 本人負担分を差し引く |
| 預り金(源泉所得税) | 6,000 | 翌月10日(納期の特例なら半年ごと)に納付 | ||
| 普通預金 | 252,000 | 社長の個人口座へ振込 |
預り金とは、つまり「社長から預かって、あとで国や年金事務所に払うお金」のことです。会社のお金ではないので、納付まできちんと残しておきましょう。
役員報酬を決めるための数字をつかむなら
役員報酬を決めるには、今期の利益の見込みを毎月つかんでおくことが欠かせません。クラウド会計ソフトなら、口座やカードの明細から帳簿がほぼ自動で作られ、利益の推移をいつでも確認できます。
代表的なサービスとして「マネーフォワード クラウド」と「freee会計」があります。無料で試せるプランが用意されていることも多いので、実際の画面を触って使いやすいほうを選ぶのがおすすめです。
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まとめ
- 役員報酬は、事業年度の開始から3か月以内に決め、毎月同額で払う(定期同額給与)
- 報酬を低くするほど税金と社会保険料の合計は減るが、社長が使えるお金も減る
- 生活に必要な手取りから逆算して決めるのが基本。決めた内容は議事録に残す
- 会社に残ったお金は、社宅・出張手当・退職金などで合法的に活用する
- 社会保険料は将来の年金や保障でもある。極端に削りすぎない
今日からできる最初の一歩
直近3か月の個人の生活費(家賃・食費・教育費・貯金)を書き出し、毎月必要な手取り額を出してみましょう。その金額を顧問税理士に伝えれば、今期の利益予想と合わせて最適な役員報酬を一緒に決められます。
※本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。個別の取り扱いは顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。
