個人事業主の国民年金の選択肢|付加年金・追納・免除申請の違いと、どれから検討すべきか
「老後の年金を少しでも増やしたい。iDeCoは知っているけれど、国民年金そのものでできることはないの?」——会社員と違って厚生年金がない個人事業主にとって、国民年金(老齢基礎年金)は老後の土台です。
実は、国民年金には、月400円で年金を上乗せできる「付加年金」、免除や猶予を受けた期間の保険料をあとから納める「追納」、払えないときに未納を防ぐ「免除申請」など、年金額に関わる制度がいくつもあります。さらに、60歳以降の「任意加入」で満額に近づける方法もあります。
この記事では、それぞれの制度の違いと、どれから検討すべきかの順番をわかりやすく解説します。
なお、保険料や年金額、制度の内容は改正されることがあります。本記事は執筆時点の情報をもとにしていますので、実際に手続きをする際は、日本年金機構などの最新情報を確認するようにしてください。
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まずは基本:国民年金の年金額の決まり方
老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間(480か月)、保険料をすべて納めると満額を受け取れます。納めていない月があると、その分だけ年金額が減ります。おおまかには、保険料を1か月納めるごとに、満額の480分の1(年額で1,700円台)ずつ年金が増えるイメージです。
2026年度(令和8年度)の国民年金保険料は、月額17,920円です。保険料は全額が社会保険料控除の対象になり、所得税・住民税を減らせます。
| 期間の種類 | 年金額への反映(2009年4月以降の期間) | 受給資格期間に |
|---|---|---|
| 納付済み | 全額(1か月=満額の480分の1) | 含まれる |
| 全額免除 | 2分の1 | 含まれる |
| 4分の3免除 | 8分の5 | 含まれる |
| 半額免除 | 8分の6 | 含まれる |
| 4分の1免除 | 8分の7 | 含まれる |
| 納付猶予・学生納付特例 | 反映されない | 含まれる |
| 未納 | 反映されない | 含まれない |
※一部免除は、残りの保険料を納めている場合です。
この表のとおり、免除は未納と違って、保険料を払っていなくても年金額の一部が保障されます。ここが、以下の制度を考えるうえでの出発点です。
1. 免除申請:払えないときは「未納」にしない
所得が少ない、失業した、事業がうまくいかないなどの理由で保険料を払うのが難しいときは、保険料の免除や納付猶予を申請できます。
- 免除:前年の所得(本人・配偶者・世帯主)が一定以下の場合に、全額・4分の3・半額・4分の1の免除を受けられる
- 納付猶予:50歳未満で、本人と配偶者の所得が一定以下の場合に、納付が猶予される
- 失業・事業の廃止などの場合は、所得の審査で特例を受けられることがある
- 産前産後の免除:出産予定月の前月から4か月間(多胎妊娠は6か月間)は、所得に関係なく保険料が免除され、納付済みと同じ扱いになる(届出が必要)
未納のままにしておくと、年金額が減るだけでなく、障害基礎年金や遺族基礎年金を受けられなくなるおそれがあります。免除や猶予が認められた期間は、受給資格の判定では保険料を納めた期間と同じように扱われるため、払えないときは未納にせず、必ず申請しましょう。
申請は、お住まいの市区町村の国民年金窓口や年金事務所で行います。マイナポータルから電子申請もできます。廃業や休業をした場合の手続きは「個人事業を廃業・休業するときの手続きまとめ」もご覧ください。
2. 追納:免除・猶予の期間を「納付済み」にする
免除や納付猶予、学生納付特例を受けた期間の保険料は、10年以内であれば、あとから納める(追納する)ことができます。追納すると、その期間は納付済みとなり、年金額が満額の計算に近づきます。
- 追納できるのは、承認を受けた月から10年以内の期間
- 原則として、古い期間から順に納める
- 承認を受けた年度の翌年度から数えて3年度目以降に追納すると、当時の保険料に加算額が上乗せされる
- 追納した保険料は、納めた年の社会保険料控除の対象になる
追納は、事業が軌道に乗って所得が増えた年に行うと、社会保険料控除による節税効果も大きくなります。たとえば、所得税・住民税をあわせた税率が30%の人が20万円を追納すると、税金が約6万円減り、実質の負担は約14万円になります。
納付猶予や学生納付特例の期間は、追納しないと年金額に全く反映されません。まずは猶予・学生特例の期間から追納を検討するのが効果的です(ただし、原則は古い期間から順に納めます)。
追納の申込みは年金事務所で行い、専用の納付書を受け取って納めます。
3. 付加年金:月400円で年金を上乗せ
国民年金の第1号被保険者(個人事業主など)は、通常の保険料に月400円の付加保険料を上乗せして納めると、将来の老齢基礎年金に「200円 × 付加保険料を納めた月数」が毎年加算されます。
例:20年間(240か月)付加保険料を納めた場合
- 納める付加保険料:400円 × 240か月 = 96,000円
- 増える年金:200円 × 240か月 = 年額48,000円(一生涯)
- 受け取り始めてから2年で、納めた付加保険料の元が取れる計算
付加保険料も社会保険料控除の対象です。少額で始められ、効率のよい制度ですが、次の点に注意しましょう。
- 国民年金基金に加入している人は、付加年金に加入できない
- 保険料の免除や納付猶予を受けている期間は、付加保険料を納められない(産前産後の免除期間を除く)
- 年金額は定額なので、物価の上昇には対応しない
- 申込みは市区町村の窓口や年金事務所で行う
iDeCoは、付加年金と併用できます。2026年12月分からは、第1号被保険者のiDeCoの掛金の上限が、国民年金基金の掛金や付加保険料と合わせて月7.5万円に引き上げられます。付加保険料を納める場合は、その分だけiDeCoの上限が小さくなります。
4. 任意加入:60歳以降に満額へ近づける
60歳までに保険料の納付済み期間が480か月に満たない場合は、60歳から65歳までの間、国民年金に任意加入して保険料を納め、年金額を増やすことができます。
- 対象は、老齢基礎年金を繰上げ受給していない人などで、納付済み期間が480か月未満の人
- 任意加入の期間中も、付加年金に加入できる
- 保険料は社会保険料控除の対象
過去の未納期間は2年を過ぎると納められなくなりますが、任意加入なら、60歳以降にその分を取り戻すことができます。学生時代の未納などがある方は、選択肢として覚えておきましょう。
あわせて知っておきたい:前納と繰下げ受給
前納で保険料を割引
国民年金保険料は、まとめて前払い(前納)すると割引があります。2026年度の場合、口座振替で2年分を前納すると、2年間で17,370円の割引になります。前納した保険料は、納めた年に全額を社会保険料控除にするか、各年分に分けて控除するかを選べます。
繰下げ受給で年金額を増やす
老齢基礎年金は、受け取り始める時期を66歳以降(最長75歳)に遅らせると、1か月あたり0.7%増額されます。付加年金も同じ率で増額されます。保険料を払う制度ではありませんが、年金を増やす方法の一つです。
どれから検討すべきか(優先順位)
| 順番 | 状況 | 検討すること |
|---|---|---|
| 1 | 保険料を払うのが難しい | 免除・猶予を申請して、未納を防ぐ |
| 2 | 過去2年以内に未納がある | 時効前に納付する |
| 3 | 過去10年以内に免除・猶予の期間がある | 所得が増えた年に追納する(猶予・学生特例の期間を優先して検討) |
| 4 | 保険料を毎月きちんと納めている | 付加年金に加入する(国民年金基金に入っていない場合)。前納も検討 |
| 5 | 60歳時点で480か月に満たない見込み | 60〜65歳の任意加入を検討する |
| 6 | さらに上乗せしたい | iDeCo・国民年金基金・小規模企業共済を検討する |
まずは、国民年金の「土台」を満額に近づけることが先決です。そのうえで、付加年金のように少額で効率のよい制度を使い、さらに余裕があればiDeCoなどで上乗せするのが基本的な順番です。iDeCo・小規模企業共済・国民年金基金の違いは「iDeCo・小規模企業共済・国民年金基金の比較」の記事で詳しく解説しています。
自分の納付状況は、ねんきんネットや毎年届くねんきん定期便で確認できます。未納や免除の期間がないか、まず確認してみましょう。
チェックリスト
- ねんきんネットやねんきん定期便で、未納・免除・猶予の期間を確認したか
- 保険料を払うのが難しい月があれば、免除・猶予を申請したか
- 過去10年以内の免除・猶予の期間について、追納を検討したか
- 国民年金基金に入っていなければ、付加年金に加入したか
- 前納(2年前納など)で割引を受けているか
- 60歳時点の納付月数の見込みを確認し、任意加入が必要か考えたか
- 確定申告で、国民年金保険料(付加・追納・前納分を含む)を社会保険料控除に入れたか
社会保険料控除の申告を忘れずに
国民年金保険料は、本人の分だけでなく、生計を一にする家族の分を支払った場合も、支払った人の社会保険料控除になります。個人事業主の方は、確定申告で控除証明書の金額を入れ忘れないようにしましょう。会計ソフトを使えば、事業の帳簿から確定申告書の作成までまとめて行え、社会保険料控除などの入力もスムーズです。
代表的なサービスとして「マネーフォワード クラウド」「freee会計」「やよいの青色申告オンライン」があります。無料で試せるプランが用意されていることも多いので、実際の画面を触って使いやすいものを選ぶのがおすすめです。
マネーフォワード クラウド
会計・確定申告・請求書などのサービスをまとめて提供しており、複数の業務を一つのシリーズで管理したい方に向いています。
freee会計
簿記の知識が少なくても使いやすい画面づくりが特徴で、経理初心者や個人事業主・小規模な会社に向いているクラウド会計ソフトです。
やよいの青色申告オンライン
会計ソフトの老舗・弥生が提供する、個人事業主向けのクラウド申告ソフトです。日々の帳簿付けから青色申告決算書・確定申告書の作成まで、画面の案内に沿って進められます。
※対応機能や料金プランは変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
まとめ
- 国民年金は、40年(480か月)納めると満額。未納の月は年金が増えず、障害・遺族年金にも影響する
- 払えないときは免除・猶予を申請。全額免除でも年金額の2分の1が保障される
- 免除・猶予の期間は10年以内なら追納できる。所得が多い年に追納すると社会保険料控除の効果も大きい
- 付加年金は月400円で「200円×月数」が上乗せされ、約2年で元が取れる。国民年金基金とは併用できない
- 60歳時点で満額に届かない場合は、任意加入で増やせる
- 保険料や制度は改正されることがあるため、最新の情報を確認する
iDeCoなどの上乗せの前に、まずは国民年金の土台を確認するところから始めましょう。手続きに迷う場合は、お住まいの市区町村の国民年金窓口や年金事務所に相談しましょう。
※本記事は2026年11月時点の情報をもとに作成しています。保険料や年金額、制度の内容は改正されることがあるため、実際に手続きをする際は日本年金機構などの最新情報を確認し、個別の判断については年金事務所や専門家にご確認ください。

