課税売上高が1,000万円を超えたら|消費税の課税事業者の判定(基準期間・特定期間)と必要な届出
「今年の売上が1,000万円を超えそう。来年から消費税を払わないといけないの?」「基準期間とか特定期間とか、言葉が難しくてよくわからない」——事業が順調に伸びてくると、必ず向き合うことになるのが消費税の課税事業者の判定です。
結論から言うと、売上が1,000万円を超えた年からすぐに消費税がかかるわけではありません。原則として、2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えた場合に、その年が課税事業者になります。ただし、前年の上半期(特定期間)の売上と給与の額によっては、1年早く課税事業者になることもあります。
この記事では、課税事業者の判定方法と、判定に使う「課税売上高」の数え方、課税事業者になったら必要な届出と準備を、個人事業主・法人それぞれのケースでわかりやすく解説します。
なお、消費税の制度は改正されることがあります。本記事は執筆時点の情報をもとにしていますので、実際に手続きをする際は、国税庁などの最新情報を確認するようにしてください。
※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。
課税事業者と免税事業者
| 課税事業者 | 免税事業者 | |
|---|---|---|
| 消費税の申告・納付 | 必要 | 不要 |
| インボイス(適格請求書)の発行 | 登録すれば発行できる | 発行できない |
| 主な判定基準 | 基準期間などの課税売上高が1,000万円超、またはインボイス登録などで自ら課税事業者になっている | 基準期間などの課税売上高が1,000万円以下で、課税事業者を選択していない |
なお、インボイス発行事業者として登録している場合は、売上の金額にかかわらず課税事業者です。この記事で解説する「1,000万円の判定」は、インボイスの登録をしていない事業者が、いつから課税事業者になるかを判断するためのものです。インボイス制度の基本は「インボイス制度の基本」で解説しています。
判定のルール①:基準期間(原則は2年前)
課税事業者かどうかは、原則として基準期間の課税売上高で判定します。
| 基準期間 | 判定 | |
|---|---|---|
| 個人事業主 | 前々年(2年前の1月1日〜12月31日) | 前々年の課税売上高が1,000万円を超えたら、その年は課税事業者 |
| 法人 | 原則として前々事業年度 | 前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超えたら、その事業年度は課税事業者 |
※法人の前々事業年度が1年未満の場合などは、計算方法が異なります。
個人事業主の例
| 年 | 課税売上高 | その年は? |
|---|---|---|
| 2024年 | 800万円 | (2022年の売上で判定) |
| 2025年 | 1,200万円(初めて1,000万円超) | 2023年の売上で判定 → 免税事業者 |
| 2026年 | 1,100万円 | 2024年(800万円)で判定 → 免税事業者(ただし特定期間の判定も必要) |
| 2027年 | ― | 2025年(1,200万円)で判定 → 課税事業者 |
このように、売上が1,000万円を超えた年の2年後に課税事業者になるのが原則です。売上が伸びた年に、2年後の消費税の負担を見越して準備を始めましょう。
判定のルール②:特定期間(前年の上半期)
基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間の金額によっては、課税事業者になることがあります。
| 特定期間 | |
|---|---|
| 個人事業主 | 前年の1月1日〜6月30日 |
| 法人 | 原則として前事業年度の開始の日から6か月間 |
特定期間の課税売上高と、給与等の支払額の両方が1,000万円を超えた場合は、その年(事業年度)は課税事業者になります。
- 課税売上高と給与等の支払額のどちらで判定するかは選べます。どちらか一方が1,000万円以下なら、免税事業者のままでいられます
- 給与等の支払額には、従業員の給与や賞与、法人の役員報酬などが含まれます(未払いのものは含まない)
- 従業員が少なく、給与の支払いが1,000万円以下の小さな事業者は、特定期間の判定で課税事業者になることは少ないといえます
上の個人事業主の例では、2025年1月〜6月の課税売上高と給与の支払額がどちらも1,000万円を超えていた場合、2026年から課税事業者になります。
判定に使う「課税売上高」の数え方
判定に使う「課税売上高」は、売上の合計とは少し異なります。
| 含めるもの | 含めないもの |
|---|---|
| ・商品やサービスの売上(消費税の課税対象のもの) ・輸出取引などの免税売上 ・事業用の車や設備を売った代金(個人事業主の場合も、事業用資産の売却は含まれる) |
・非課税の売上(住宅の家賃、土地の売却、一定の医療・介護など) ・不課税の収入(補助金・助成金、保険金、配当など) ・返品・値引きなどの金額(差し引く) |
税込か税抜か
- 基準期間に免税事業者だった場合:消費税を抜かずに、受け取った金額のままで計算する(免税事業者は消費税を納めていないため)
- 基準期間に課税事業者だった場合:税抜の金額で計算する
免税事業者の期間は「税込1,000万円」で判定されるため、税抜で考えるよりも早く1,000万円を超えることがある点に注意しましょう。
補助金が消費税の対象外であることは「補助金・助成金を受け取ったときの税金と経理処理」、住宅の家賃が非課税であることは「社宅を会社で借りる場合の家賃計算と税金」でも触れています。
新しく設立した法人・法人成りの場合
設立したばかりの法人には基準期間がないため、原則として最初の2事業年度は免税事業者です。ただし、次の場合は課税事業者になります。
- 事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上の法人(新設法人)
- 大きな会社などが出資して設立した一定の法人(特定新規設立法人)
- 2期目で、特定期間(1期目の最初の6か月)の課税売上高と給与等の支払額がどちらも1,000万円を超えた場合
- インボイス発行事業者として登録した場合
個人事業主が法人成りをした場合も、法人には基準期間がないため、一定の条件のもとで免税事業者になれる期間があります。ただし、取引先からインボイスを求められる場合は、登録して課税事業者になる必要があります。法人成りの判断については「法人成りは所得いくらから得になるか」で解説しています。
課税事業者になったら必要な届出
| 届出 | 提出が必要なとき | 期限 |
|---|---|---|
| 消費税課税事業者届出書(基準期間用) | 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えたとき | 速やかに |
| 消費税課税事業者届出書(特定期間用) | 特定期間の課税売上高(と給与等の支払額)が1,000万円を超えたとき | 速やかに |
| 消費税簡易課税制度選択届出書 | 簡易課税制度を選びたいとき | 原則として、適用を受けたい課税期間が始まる前日まで |
| 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書 | 基準期間の課税売上高が1,000万円以下になり、免税事業者に戻るとき | 速やかに |
上の個人事業主の例では、2025年の課税売上高が1,000万円を超えたことが確定した2025年末以降、速やかに課税事業者届出書を提出します。届出を忘れても課税事業者であることに変わりはないので、2027年分の消費税の申告は必要です。
簡易課税を選ぶなら、課税期間が始まる前に
基準期間の課税売上高が5,000万円以下であれば、売上の消費税額に業種ごとの「みなし仕入率」をかけて納付額を計算する簡易課税制度を選べます。経費が少ない業種では、原則課税より納付額が少なくなることもあります。
ただし、簡易課税を選ぶには、原則として適用を受けたい年(事業年度)が始まる前日までに届出が必要です。上の例で2027年から簡易課税を使いたい場合は、2026年12月31日までに届出書を出しておく必要があります。一度選ぶと、原則として2年間はやめられません。
2割特例・3割特例は使える?
インボイス制度をきっかけに課税事業者になった小規模事業者は、売上の消費税額の2割(個人事業主は2027年分・2028年分は3割)を納付額とする特例を使えます。ただし、この特例は、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えて課税事業者になる年には使えません。売上の増加で課税事業者になった場合は、原則課税か簡易課税で計算することになります。
課税事業者になる前に準備しておくこと
- 売上の推移を毎月確認する:1,000万円を超えそうな年は、2年後の課税事業者を見越して準備を始める
- 上半期の売上と給与も確認する:特定期間の判定で、1年早く課税事業者になることがある
- 価格設定を見直す:消費税分を価格に転嫁できているか確認する。税込価格のままだと、利益が減る
- 原則課税と簡易課税を比べる:届出の期限(課税期間の開始前日)に間に合うよう、前年のうちに試算する
- 経理の方法を決める:税込経理か税抜経理か、会計ソフトの税区分の設定などを整える
- 納税資金を準備する:消費税は、預かった売上の消費税から支払った消費税を引いた額を納める。利益が出ていなくても納付が必要になることがあるため、預かった分を別に取っておく
- 申告期限を確認する:個人事業主は翌年の3月31日、法人は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内
消費税の計算と申告をラクにするなら
課税事業者になると、取引ごとの税区分の管理や、消費税の申告書の作成が必要になります。会計ソフトを使えば、仕訳を入力するだけで課税売上高や消費税額を集計でき、課税事業者の判定に必要な売上の推移も確認しやすくなります。
代表的なサービスとして「マネーフォワード クラウド」と「freee会計」があります。無料で試せるプランが用意されていることも多いので、実際の画面を触って使いやすいほうを選ぶのがおすすめです。
マネーフォワード クラウド
会計・確定申告・請求書などのサービスをまとめて提供しており、複数の業務を一つのシリーズで管理したい方に向いています。
freee会計
簿記の知識が少なくても使いやすい画面づくりが特徴で、経理初心者や個人事業主・小規模な会社に向いているクラウド会計ソフトです。
※対応機能や料金プランは変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
まとめ
- 課税事業者かどうかは、原則として基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えるかで判定する
- 売上が1,000万円を超えた年の2年後から課税事業者になるのが原則
- 特定期間(前年の上半期)の課税売上高と給与等の支払額がどちらも1,000万円を超えると、1年早く課税事業者になる
- 課税売上高には事業用資産の売却や輸出売上も含まれ、非課税・不課税の収入は含まれない。基準期間が免税事業者なら税込で判定
- 課税事業者になったら課税事業者届出書を速やかに提出。簡易課税は課税期間が始まる前日までに届出
- 売上の増加で課税事業者になった年は、2割特例・3割特例は使えない
- 制度は改正されることがあるため、最新の情報を確認する
売上が1,000万円を超えるのは、事業が順調に育っている証です。2年後の消費税を見越して、価格設定や納税資金、計算方法の選択を早めに準備しておきましょう。判断に迷う場合は、税務署や税理士に相談しましょう。
※本記事は2026年11月時点の税法の情報をもとに作成しています。消費税の制度は改正されることがあるため、実際に手続きをする際は国税庁などの最新情報を確認し、個別の判断については税理士等の専門家にご確認ください。

