個人事業主の節税、年末までにできる駆け込み対策まとめ|小規模企業共済・iDeCo・ふるさと納税・40万円未満の備品購入

「もう11月。今年の税金、何か対策しておかないとまずい?」「年末までに駆け込みでできる節税ってある?」——年末が近づくと、個人事業主ならこんなふうに焦り始めるのではないでしょうか。

結論から言うと、12月31日までに手を打てば今年の税金を減らせる対策はまだあります。ただし、今から始めても今年の控除に間に合わないものや、「お金を使うだけで手元に残らない」節税もあるので、順番と注意点を押さえることが大切です。この記事では、小規模企業共済、iDeCo、ふるさと納税、40万円未満の備品購入(少額減価償却資産の特例)の4つを中心に、年末までにやるべきことをまとめました。

なお、税法や各制度のルールは改正されることがあります。本記事は執筆時点の情報をもとにしていますので、実際に手続きをする際は、国税庁や各制度の公式サイトで最新情報を確認してください。

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まずは今年の利益(所得)の見込みを確認する

節税対策を考える前に、今年の所得がいくらくらいになりそうかをざっくり把握しておきましょう。所得税は所得が増えるほど税率が上がる「累進課税」なので、どれくらい節税できるかは、あなたの税率によって変わります。

課税される所得金額 所得税率 住民税率 合計の目安
195万円以下 5% 10% 約15%
195万円超〜330万円以下 10% 約20%
330万円超〜695万円以下 20% 約30%
695万円超〜900万円以下 23% 約33%
900万円超〜1,800万円以下 33% 約43%

※1,800万円超はさらに税率が上がります。復興特別所得税は省略しています。

たとえば合計の税率が約30%の人が、所得控除や経費を10万円増やすと、税金はおよそ3万円減ります。会計ソフトで1月〜10月の数字を確認し、11月・12月の売上と経費の見込みを足して、今年の所得をざっくり計算してみましょう。

年末までにできる節税対策4選

対策 節税の仕組み 今から今年分に間に合う? お金の行き先
小規模企業共済 掛金が全額所得控除 △ 手続き次第。早めの申し込みが必須 将来の退職金として積み立て
iDeCo 掛金が全額所得控除 ✕ 新規加入は今年の控除にはほぼ間に合わない 老後資金として積み立て
ふるさと納税 寄附額のうち2,000円を超える部分が控除 ◯ 12月31日の決済分まで 返礼品を受け取れる
40万円未満の備品購入 購入した年に全額を経費に ◯ 12月31日までに事業で使い始めれば 事業で使う備品が手元に残る

1. 小規模企業共済:掛金が全額所得控除になる「経営者の退職金」

小規模企業共済は、個人事業主や小さな会社の経営者が、廃業や引退に備えて積み立てる退職金制度です。運営は国の機関である中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)です。

  • 掛金:月額1,000円〜70,000円(500円単位)で自由に選べ、あとから増額・減額もできる
  • 節税効果:その年に払い込んだ掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引ける(最大で年84万円)
  • 前納:掛金をまとめて前払い(前納)することもでき、一定の範囲で前納した年の控除にできる

年末の駆け込み加入で注意したいこと

所得控除の対象になるのは、その年の12月31日までに実際に払い込んだ掛金です。加入の申し込みから掛金の引き落とし開始までには時間がかかるため、12月に入ってから申し込むと、今年中に掛金が払い込まれず控除に間に合わないことがあります。加入を考えているなら、11月中には商工会・商工会議所・金融機関などの窓口に相談し、今年分として払い込めるか、前納できるかを確認しましょう。

知っておきたいデメリット

  • 共済金は廃業時や65歳以降などに受け取るもので、自由に引き出せる貯金ではない
  • 加入期間が20年未満で任意解約すると、元本割れする場合がある(12か月未満の解約では解約手当金を受け取れない)
  • 掛金は事業の経費ではなく、個人の所得控除(青色申告決算書の経費には入れない)

「今年の税金を減らしたいから」と無理な掛金を設定すると、資金繰りが苦しくなります。毎月払い続けられる金額にすることが大切です。

2. iDeCo:今年の控除より「来年以降」の準備として

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を積み立てて運用し、老後に受け取る年金制度です。掛金は全額が所得控除になり、運用で得た利益にも税金がかかりません。

  • 個人事業主(国民年金の第1号被保険者)の掛金の上限:月額68,000円(国民年金基金の掛金や付加保険料と合算)
  • 制度改正:2026年12月分(2027年1月引き落とし分)から、上限が月額75,000円に引き上げられる予定です。加入できる年齢も、条件を満たせば70歳未満まで広がります。

今から加入しても今年の控除にはほぼ間に合わない

iDeCoの所得控除は、その年に実際に引き落とされた掛金が対象です。新規加入の手続きには1〜2か月程度かかることが多く、掛金も翌月に引き落とされる仕組みのため、11月以降に申し込んでも、今年の控除にはほとんど反映されません。

ただし、来年以降の節税の準備として、年末のうちに申し込んでおく価値は十分あります。すでに加入している人は、来年に向けて掛金を増やせないか(上限引き上げ後の金額も含めて)を検討しておきましょう。

知っておきたいデメリット

  • 原則として60歳まで引き出せない
  • 運用の結果によっては元本割れすることがある
  • 口座管理手数料などのコストがかかる

3. ふるさと納税:12月31日の決済分まで今年の控除に

ふるさと納税は、応援したい自治体に寄附をすると、寄附額から2,000円を差し引いた金額が、所得税と住民税から控除される制度です。寄附した自治体から地域の特産品などの返礼品を受け取れます。

厳密には税金の総額が減る「節税」ではなく、税金の前払いで返礼品を受け取れる仕組みですが、実質2,000円の負担で返礼品が届くため、年末の定番の対策です。

個人事業主が気をつけたいポイント

  • 期限は12月31日:今年の控除になるのは、12月31日までに決済が完了した寄附です。年末はサイトや決済が混み合うため、余裕をもって申し込みましょう。
  • 確定申告が必要:個人事業主は確定申告をするため、会社員向けの「ワンストップ特例」は使えません。確定申告で寄附金控除を申告します。自治体から届く寄附金受領証明書(またはポータルサイトが発行する証明書データ)を保管しておきましょう。
  • 控除の上限は「所得」で決まる:上限額は売上ではなく所得(売上から経費を引いた後の金額)や家族構成で決まります。この後に紹介する備品購入などで所得が減ると上限額も下がるため、ふるさと納税は年末の最後に、所得の見込みが固まってから行うのがおすすめです。
  • 上限を超えた分は自己負担:上限を超えて寄附した分は控除されず、単なる寄附になります。

なお、ふるさと納税は事業の経費にはなりません。また、ポータルサイトによる独自のポイント付与は2025年10月から禁止されるなど、ルールの見直しが続いています。寄附をする前に、その時点のルールを確認しましょう。

4. 40万円未満の備品購入:少額減価償却資産の特例で一括経費に

パソコンやプリンター、デスク、カメラなど、事業で使う10万円以上の備品は、通常は耐用年数に応じて数年に分けて経費にします(減価償却)。しかし、青色申告をしている個人事業主なら、「少額減価償却資産の特例」を使って、取得価額40万円未満の備品を購入した年に全額経費にできます。

  • 対象:青色申告をしている中小企業者等(個人事業主を含む。常時使用する従業員が400人以下)
  • 金額の基準:1つ(1組)あたりの取得価額が40万円未満(令和8年度税制改正で30万円未満から引き上げ。2026年4月1日以後に取得したものが対象)
  • 年間の上限:特例で経費にできるのは年間合計300万円まで
  • 適用期限:2029年3月31日までに取得したもの

年末の駆け込み購入で注意したいこと

  • 12月31日までに「事業で使い始める」ことが必要:注文しただけ、代金を払っただけでは足りません。年内に納品され、実際に事業で使い始めていることが条件です。年末は配送が遅れやすいので、早めに注文しましょう。
  • 本当に必要なものだけを買う:税率が約30%の人が30万円の備品を買っても、減る税金は約9万円です。残りの約21万円は手元から出ていくので、「節税のために不要なものを買う」と、かえってお金が減ります。
  • 償却資産税の申告:この特例を使った資産は、償却資産税(固定資産税)の申告対象になります。翌年1月31日までに市区町村へ申告が必要です(資産の合計が150万円未満なら課税はされません)。
  • 申告書への記載:青色申告決算書の減価償却費の計算欄に記載し、特例を適用したことがわかるようにします。

あわせて確認したい年末のチェックリスト

4つの対策とあわせて、次の点も年内に確認しておきましょう。

  • 経費の計上漏れはないか:12月分の通信費や家賃、カードで払った経費など、年内に発生した経費が漏れなく記帳されているか確認します。
  • 国民年金・国民健康保険の保険料:今年支払った分は社会保険料控除の対象です。国民年金を前納した場合の扱いも確認しておきましょう。
  • 医療費控除の準備:家族の分も含めて、今年の医療費の領収書を整理しておきます。
  • 青色申告特別控除の要件:最大65万円の控除を受けるには、複式簿記での記帳やe-Taxでの申告などの要件があります。今のうちに記帳を整えておきましょう。

年末の節税でやってはいけないこと

  • 来年の経費を今年に入れる:まだ受け取っていない商品やサービスの代金を今年の経費にすることは、原則としてできません。
  • プライベートの買い物を経費にする:家族用のパソコンや家電を「事業用」として計上するのは、税務調査で否認される原因になります。
  • 資金繰りを無視した掛金設定・購入:節税できても、手元の現金が足りなくなっては本末転倒です。

年末の数字をつかむなら

年末の節税対策は、今年の所得の見込みがわかっていることが出発点です。日々の記帳が追いついていないと、どの対策をどれくらいやればよいのか判断できません。クラウド会計ソフトを使えば、銀行やカードの明細を自動で取り込み、今の利益をリアルタイムで確認しやすくなります。固定資産の登録や減価償却の計算、確定申告書の作成までまとめて管理できます。

代表的なサービスとして「マネーフォワード クラウド」と「freee会計」があります。無料で試せるプランが用意されていることも多いので、実際の画面を触って使いやすいほうを選ぶのがおすすめです。

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会計・請求書・経費精算などのサービスをまとめて提供しており、複数の業務を一つのシリーズで管理したい方に向いています。

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確定申告の書き方を本で確認したい方へ

年末に支払った小規模企業共済の掛金やiDeCo、ふるさと納税は、翌年の確定申告で控除として申告して、はじめて節税の効果が出ます。申告書への書き方を記入例で確認したい方は、確定申告の解説書を参考にするとスムーズです。

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※書籍は税制改正にあわせて毎年改訂されます。購入の際は最新年度版かどうかをご確認ください。
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まとめ:年末の駆け込み節税は「順番」が大切

  1. 今年の所得の見込みを確認する(会計ソフトで1〜10月の数字+11・12月の見込み)
  2. 小規模企業共済は11月中に相談。12月に入ると今年の払い込みに間に合わないことも
  3. iDeCoは来年以降の準備として申し込む。今年の控除にはほぼ間に合わない
  4. 必要な備品があれば年内に購入し、12月31日までに使い始める(40万円未満なら一括経費、年300万円まで)
  5. ふるさと納税は最後に。所得の見込みが固まってから、上限額の範囲で12月31日までに決済

焦って不要なものを買ったり、無理な掛金を設定したりするのは逆効果です。「将来の自分のお金として残る対策」と「事業に本当に必要な支出」を優先して、できることから進めましょう。判断に迷う場合は、税理士に相談するのが安心です。

※本記事は2026年11月時点の税法・制度の情報をもとに作成しています。税法や各制度のルールは改正されることがあるため、実際に手続きをする際は、国税庁・中小機構・国民年金基金連合会(iDeCo)・総務省(ふるさと納税)などの公式情報で最新の内容を確認し、個別の判断については税理士等の専門家にご確認ください。