会社のお金を「ちょっと借りただけ」が危ない。ひとり社長の役員貸付金の怖さと解消法

「生活費が足りなかったので、会社の口座から少し引き出した」「個人の買い物を会社のカードで払ってしまった」――ひとり社長にはよくある話です。

しかし結論から言うと、会社のお金を私的に使うと「役員貸付金」となり、利息の計上が必要になったり、銀行からの評価が下がったりします。放っておくほど解消が難しくなるため、早めに手を打ちましょう。

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役員貸付金とは「社長が会社から借りているお金」

結論:会社のお金を社長が個人的に使うと、帳簿上は「会社が社長にお金を貸した」と扱われます。

役員貸付金とは、つまり「社長が会社に返さなければならない借金」のことです。次のようなケースで発生します。

  • 会社の口座から生活費を引き出した
  • 会社のカードで個人の買い物をした
  • 使い道の分からない出金がある(経費として説明できない)
  • 役員報酬とは別に、会社から社長にお金を振り込んだ

個人事業主のときは、事業用の口座から生活費を引き出しても「事業主貸」として処理すれば済みました。しかし法人には「事業主貸」がありません。会社のお金は、たとえ100%自分の会社でも、社長のお金ではないのです。

たとえば、会社の口座から生活費10万円を引き出したときの仕訳はこうなります。

借方(科目) 金額 貸方(科目) 金額 ポイント・摘要
役員貸付金 100,000 普通預金 100,000 社長が生活費として引き出し(会社から社長への貸付け)

役員貸付金の3つのリスク

結論:役員貸付金には「利息の計上」「銀行の評価悪化」「税務調査での指摘」という3つのリスクがあります。

リスク1:利息をもらっていないと、税金が増える

会社が社長にお金を貸している以上、本来は利息をもらうべきです。無利息のままだと、本来もらうはずの利息分が「社長への給料」とみなされ、次のような問題が起きます。

  • みなされた給料は、毎月同額の役員報酬ではないため会社の経費にならない
  • 社長個人には、その分の所得税がかかる

これを避けるため、一般的には会社が利息を受け取ったものとして処理します。この利息を認定利息といい、つまり「実際にもらっていなくても、もらったことにして計上する利息」のことです。

会社が銀行から借入れをしていない場合、利率の目安は、国が毎年定める割合(利子税特例基準割合)です。2026年は1.3%(2025年は0.9%)です。会社が銀行などから借入れをしている場合は、その借入金利を使うこともできます。会社の借入の状況によっては、別の利率を使える場合もあります。

たとえば、役員貸付金が年間を通じて300万円ある場合です。

借方(科目) 金額 貸方(科目) 金額 ポイント・摘要
役員貸付金 39,000 受取利息 39,000 300万円×1.3% 社長への貸付金の利息(決算時)

受取利息は会社の利益になるため、会社の税金が増えます。しかも利息を実際に払わなければ、役員貸付金はさらに膨らんでいきます。

リスク2:銀行からの評価が下がる

銀行は、決算書に役員貸付金があると「会社のお金を私的に使う社長」と見ます。融資の審査では、役員貸付金は資産から差し引いて評価されることが多く、融資が受けにくくなる原因になります。

リスク3:税務調査で「給料」や「経費の否認」を指摘される

使い道の分からない出金が多いと、税務調査で詳しく調べられます。返済の実態がない場合は、貸付金ではなく社長への給料(役員賞与)と判断されることもあり、会社の経費にならず、社長に所得税がかかるという二重の負担になります。

役員貸付金を解消する4つの方法

結論:一番確実なのは「社長個人のお金で返済する」ことです。ほかに、役員報酬を増やして返済原資を作る、社長個人の資産を会社が買い取る、などの方法があります。

方法 内容 注意点
個人のお金で返済 社長の貯金から会社口座に振り込む 最もシンプルで、税金もかからない
役員報酬を増やして返済 次の事業年度の役員報酬を増額し、増えた手取りで少しずつ返す 報酬を上げると社会保険料・所得税が増える。変更は期首から3か月以内
個人の資産を会社が買い取る 社長個人の車やパソコンなどを、会社が適正な価格で買い取り、その代金と相殺する 時価を大きく超える価格は否認される
配当・役員賞与と相殺 配当や事前に届け出た賞与を返済に充てる 配当は会社の経費にならず、社長にも税金がかかる

社長個人のお金で50万円を返済した場合の仕訳です。

借方(科目) 金額 貸方(科目) 金額 ポイント・摘要
普通預金 500,000 役員貸付金 500,000 社長から会社へ返済

決算直前だけ返して、決算後にまた引き出すようなやり方は、実態がないと判断されることがあるので避けましょう。

そもそも発生させない3つのルール

結論:「会社の口座からは経費と役員報酬しか出さない」というルールを徹底すれば、役員貸付金は生まれません。

  1. 生活費は役員報酬の範囲でやりくりする:足りないなら、次の事業年度に役員報酬の見直しを検討します(3日目の記事を参照)。
  2. 会社のカードと個人のカードを分ける:財布に入れる位置を変えるなど、物理的に間違えない工夫をします。
  3. 間違えて使ったら、その月のうちに個人のお金で戻す:放置せず、月次の経理作業でチェックします。

公私の区別と役員貸付金の管理をラクにするなら

役員貸付金を生まないためには、会社のお金の動きをこまめに確認することが大切です。クラウド会計ソフトに法人口座・法人カードを連携しておけば、私用の支払いが混ざったときにもすぐ気づけます。

代表的なサービスとして「マネーフォワード クラウド」と「freee会計」があります。無料で試せるプランが用意されていることも多いので、実際の画面を触って使いやすいほうを選ぶのがおすすめです。

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まとめ

  • 会社のお金を私的に使うと「役員貸付金(社長の会社への借金)」になる。法人に「事業主貸」はない
  • 無利息で放置すると、認定利息(2026年は1.3%が目安)の計上が必要になり、会社の税金が増える
  • 役員貸付金は銀行の評価を下げ、税務調査では給料とみなされるおそれもある
  • 解消は「個人のお金で返済」が最も確実。役員報酬の見直しや資産の買い取りも選択肢
  • 会社の口座からは経費と役員報酬だけを出すルールを徹底する

今日からできる最初の一歩

会計ソフトで「役員貸付金」の残高を確認してみてください。残高がある場合は、その内訳(いつ、何に使ったか)を一覧にし、今期中に返済する金額と方法を決めましょう。残高がゼロなら、今のルールを続けるだけで大丈夫です。

※本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。個別の取り扱いは顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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